冷たい水の中をきみと歩いていく

平坦な戦場で生き延びること

月曜日の実験室

日,オードリー若林のエッセー『ナナメの夕暮れ』を読んだ。 特別何かが尖っていて心に刺さる!というわけではないが,私のようなタイプの人間は共感してしまうことが多い。

 

エッセーの内容としては,冷笑混じりで呼ばれる「自分探し」を40歳近くまで続け(ざるを得なかっ)た著者の,苦悩の解消について。そしてタイトルにもなっている「ナナメからモノを見てしまう」(=斜に構えてしまう)ネガティブな自分をただ変えたいと願うのではなく,他人をまずは肯定して,自分を肯定してみる……という「姿勢」についてだ。

 

言ってしまえばそんなのは,よく啓発本には書いてある内容だ。そしてデキる人からすれば言われるまでもない当たり前の話だ。だから啓発本はいつの時代もなくならない。それは一種の新興宗教だからだ。人の弱さにつけこんで,「こうすればいいんですよ」と解決策を提示しているように見えて,その実それを達成することがどれだけ難しいことか。その達成は到底困難なのに,「自分を変えたい」と救いを求めて教祖様が執筆した経典に群がる信者たち。これを宗教と言わず何と言おう。

ただ従来の宗教と違うのは,教祖様はとっかえひっかえされ日々消費されるし,経典は日々ダイヤモンド社やら日経BP社やらから発行されているということだ。極めて資本主義的・現代的・システマティックな宗教だ。「幸せになりたい/ポジティブになりたい」という教義のみは不変のようだが。

 

しかし,そんなありふれた話であったとしても,そんなことがデキない人というのが世の中にはいくらでも存在する。考えれば考えるほど思考の闇に落ち込んでいってしまい身体を縛り付けてしまうというタイプは,少なくとも私の周りにはいっぱいいる。オードリー若林もまさにそうだったようだ。教祖様の「啓発してやるよ!」という目線でなく,実体験として,そして切実な思いとして伝わってくる誠実さが好ましい。

ナナメの夕暮れ

ナナメの夕暮れ

 

 ついこの間,同様にオードリー若林の『社会人大学人見知り学部卒業見込』も読んでいた。

最近radikoでオードリーのオールナイトニッポンをよく聴いている。休日にごはんを作りながら流している。下ネタやら馬鹿な話やらくっだらねえ話ばっかりだが私はこういうのが大好きなのだ。 若林が意味わからない海の家で7万ぼったくられた話など,包丁持ったまま腹抱えて笑ってしまった。春日がめちゃくちゃエロくて若林がそれをイジるのも見ててホッコリする。

radiko.jp

 ていうか,そう。

最近のライカさん,オードリー(特に若林)にハマっている。

いやまあそれだけなんだけど。

 

前職の後輩でオードリーが好きというやつがいた。その時にオードリーがオールナイトニッポンをやっているという話を聞き,「なんだよ,おまえサブカルオシャレクソ野郎じゃねぇかよ」と嫌悪感をあらわにしてしまった。オードリーのことをよく知らなかったのだが,オールナイトニッポンサブカルだと思いこんでいたため(偏見),そしてその後輩がイケメンだったため(最悪),なんとなく嫌悪の対象となってしまっていた。心のせまさヤバくないか……?

ところでライカさんはサブカル野郎をいつも否定しているのだが,そろそろ自分もただのサブカル野郎であることを「肯定」しなくちゃいけない。

 

ところで,ライカさんはバーチャルYouTuber月ノ美兎(委員長)に割と前からハマっていてよく見ている。彼女は見た目もさることながら,トークが軽妙でとても面白いのだ。そんな彼女がやっているラジオ形式の生放送月ノ美兎の放課後ラジオ:みとらじ」に誰かが「オードリーのオールナイトニッポンっぽい」とコメントしていたのだ。

twitter.com

そこで,いままでなんとなく「うわーサブカル野郎!!サブイボが出るから近寄らないで~!!!」とか言って遠ざけていた「オードリーのオールナイトニッポン」を聴いてみたのだ。

 

面白かった。素直に面白かった。んでハマった。

 

……そうなのだ。昔っからこうなのだ。ディズニーランドが楽しい!と素直にはしゃげない人間だった。行く前にサークルの友人らにさんざん「ディズニーの”シマ”とったるわ!(当時ヤクザ映画にハマっていた)」「わしら鉄砲玉ですけんのお!」とバカ丸出しでイキリまくったは良いものの,結局エレクトリカルパレードに一番目を輝かせていたのはライカさんだったと後から笑われた。タワー・オブ・テラーの冒頭のシリキ・ウトゥンドゥでめちゃくちゃはしゃいでいたのはライカさんだった。そういう人間なのだ。

 

なんでも偏見を持っちゃダメという気づき。口に出して言うのは簡単だが,本当にそれは大切で,偏見は目のフィルターを曇らせて人生の可能性をせばめてしまう。文字通り色眼鏡で世の中を見ると,どうしたって斜に構えて,ナナメに見てしまう。

 

でもそんなのってツマンナイ。一度きりの人生なんだから,ツマンナイ偏見なんて捨てて楽しく生きたほうがお得じゃん。若林は40歳近くでそれに気付いたと言っている。ライカさんは若林よりも10年早くそれに気付けたんだ。そう胸を張って,まずは動き出そう。

 

前半と後半でテーマがだいぶ変わっちゃったけど,まあいいや。

タイトルは今日サイン会&トークイベントに参加してきた西島大介先生の『土曜日の実験室』から。めちゃくちゃ面白いからサブカル好きは読むべき。ライカさんも勿論サブカル好きなので読んだ。自分を肯定していくスタイル。

土曜日の実験室―詩と批評とあと何か (Infas books)

土曜日の実験室―詩と批評とあと何か (Infas books)

 

 おわり~