冷たい水の中をきみと歩いていく

平坦な戦場で生き延びること

池袋ウエストゲートパークサイドホテル

日,10日間限定で中国アニメ映画を上映するということで池袋HUMAXシネマズに行ってきた。お目当ては『羅小黒戦記』という中国のアニメ映画。ツイッターのフォロワーさんで結構観に行っているひとがいたので気になっていたのだ。中国で大人気アニメ『羅小黒』の劇場版らしく,You Tubeで予告編や微博にアップされていたMVなどを観てから行った。

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いやー,すごく面白かった。ストーリーはわかりやすい王道ものであり,しかしだからこそ,最近の日本では見ることが少なくなった作品だ。私はむしろこういう作品のほうが好きだ。あと主人公の「クロ」がとにかく可愛いし,結果的に彼と行動をともにする人間の「無限」はとにかくかっこいい。ふたりがツンケンしながらも歩み寄っていくさまは,本作のひとつの見所だ。

 

今日の9時からの上映だったので,11時前には映画館から出た。そういえば池袋HUMAXシネマズに来たのなんて何年ぶりだろう。確か大学の後輩がチケット売り場でバイトしてて出くわしたことがあったななんて思い出した。お昼時にはまだ少し早いかな,なんて思いつつ久々にサンシャイン通りを歩いてみた。ときおり昔を思い出しながら。

 

私と池袋との付き合いは長い。小さい頃,親と買い物に行くときはだいたい池袋だった。いまはヤマダ電機となってしまった三越デパート。広いレストランでお子さまランチをよく食べて旗を持って帰っていた。昔は本物の鐘が鳴っていたビックカメラ。近くの塾に通っていたら鐘の音がうるさかった。すっかり綺麗になった西武デパート。屋上の遊園地のような施設のボールプールでよく遊んだ。いまはGUになってしまったキンカ堂。ベンチに座って店内に設置されていたテレビで大長編ドラえもんをよく観ていた。幼稚園受験で通っていた幼児教室。同じビルのミルキーウェイにもよく行った。

 

中高生になると遊ぶ場所はだいたい池袋だった。HUMAXかシネマサンシャインで映画を観た。ハイパーレーンやロサ会館やブランズウィックでボウリングをした。ブランズウィック横のゲームセンターやランブルプラザでゲームをした。アメニティドリームやイグニスで遊戯王カードを買った。友人たちとラーメン本を買っていろいろなラーメン屋さんを開拓した。文化祭の打ち上げで風々亭や鍋ぞうで盛り上がった。夏休みに部活サボって漫画喫茶マンボーの3時間パックで過ごしたりブックオフで立ち読みしてたりアドアーズでゲームした。本当に思い出は尽きない。

 

大学受験期にも池袋の塾に通っていた。当時は汚かった池袋南公園近くの丸亀製麺で毎日お昼を食べていた。ぶっかけ冷の大に天かすをしこたまかけてご飯代を浮かせ,浮いたお金でサンシャイン通りにあったとらのあなに通った。オタクたちが足繁く通った汗臭いとらのあなも,いまはJTBの綺麗なビルになっている。兵どもが夢の跡。また,塾の友人と映画館で『トイ・ストーリー3』を観て号泣したり,彼らと児童館でバスケをして塾の説明会に遅刻して怒られたのもいい思い出だ。

 

大学生になると喫茶店(カフェではない)に通うことが増えた。友人に教えてもらった「ハイマート」という喫茶店はとりわけ思い出深い。ここはいまでは珍しくなった全席喫煙可のお店。すごくよく働くゴスロリのおねえさんとか,業田良家自虐の詩』の幸江さんを彷彿とさせるおばさんとか,店員さんも個性的だった。放っておかれる感じが好きで,待ち合わせにもよく利用したし,本当に足繁く通った。珈琲1杯で数時間粘るなど嫌な客だったに違いない。ランチセットも美味しく,プリンが地味に名物だと知ったのはだいぶ後年であった。ここもいまでは「椿屋カフェ」になってしまった。「蚤の市」や「戸論戸」,「蔵」など池袋は好きな喫茶店が多くある。これも再開発でなくなってしまったが,池袋中公園前にあった池袋保健所にあった喫茶店(名前を失念してしまい調べてもわからなかった)も一回しか行かなかったが印象に残っている。確かエレベーターでは行けず一個下の階から階段で行った気がする。

 

さて,お昼ごはんはあれこれ迷ったが,結局個人的に池袋で一番美味しい魚定食を出すと思っている「ずぼら」へ落ち着いた。美久仁小路の入り口にあるこのお店は引き戸ということもあり一見入りにくいが,大学生の頃に入って以来,魚が食べたいなと思ったらここに来ている。夜は居酒屋になっており一回だけふらっと来たことがある。そのときは刺身とかハムカツとかつまんだっけ。

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池袋は,いまでは少なくなったものの美久仁小路や栄町通りに代表される小路がいっぱいある街だった。とりわけ有名だったのは「人世横丁」だが,すでに解体されいまでは石碑が残るのみとなっている。

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人世横丁を偲ぶ石碑。

池袋の小路でいえば,いまでは影も形もないが「ひかり町」というのが思い出深い。いまのROUND1があるあたりには昔そういう名前の小路が存在していた。入り口にでっかく「ひかり町」と書かれており,その下に漫画風の絵が描いてあった。調べてみると,それは往時そこにあった店主たちの肖像なのだそうだ。なんとなく気にはなっていたのだが,基本的に飲み屋が集まっている通りなので昼間は閑散としていてなんだか怖かった。初めて足を踏み入れたのは中2の頃に友人とふたりでだった。きょろきょろしながらおっかなびっくり進んでいくと,なぜかでかいスコップが放置してあったり違法っぽいポルノDVDを売ってそうな店などあったが,怖くて到底そこに入ることは叶わなかった。10年以上前にここはなくなってしまった。近くにあった「テアトルシネマ」や「ウェンディーズ」もユニクロになってしまい,一抹の寂しさを憶える。

 

そういえばシネマサンシャインはなくなって旧ブランズウィックのあたりにグランドシネマサンシャインが出来たんだったと思い出し,映画は観ないが立ち寄ってみる。

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……めっちゃでかい。映画館は4階がロビーになっていて,そこでチケットを買うシステム。エスカレーターの導線があまり良くないので結構混み合いそうだ。エスカレーターの壁面に往年のポスターが貼られていてクラシカルな雰囲気も醸し出している。そして屋上にはバッティングセンターがある。ブランズウィック時代からここの屋上にはバッティングセンターがあった。たしかボウリング場が閉鎖されたあともバッティングセンターだけはしばらく営業していたはずだ。そういえばブランズウィックにはランチ食べ放題の「大福来」という中華料理屋も入っていた(一回だけ行ったけどあまり美味しくなかった)けど,どうなったんだろう。

 

それにしても今日は暑い。アイス珈琲が飲みたくなってきた。池袋で一番美味しいアイス珈琲を出す店といえば,西口にある「珈琲蔵」だ。ひさびさに行ってみようと思い,西口へ移動するために陸橋の方に向かう。

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グランドシネマサンシャインを通り過ぎ,そのまま池袋中公園の方面へ足を向ける。ここは近くにアニメイトができたおかげで,なにやらオタクたちがグッズの交換をしている光景をよく見かけたが,ここも再開発で封鎖されて入れなくなっていた。公園の目の前にある「パークサイドホテル」アニメイトができた関係で人が多く,日本一入りにくいラブホテルなんじゃないかと睨んでいる。そのまま通り過ぎて明治通りを渡り,しばらく歩いていくと西口につながる陸橋がある。そして近くで見ると豊島清掃工場の煙突は本当にでかい。210メートルあり,サンシャイン60とほぼ同じ高さなんだとか。

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3年前にふらりと撮った豊島清掃工場の煙突。

東口に比べて西口は雑然としている。陸橋から見える景色は「ファッションヘルスイカ」や「ソープランド若葉」やラブホテルや飲み屋ばかりで,西口には小さい頃は立ち入ったことすらほぼなかった。いまではそういうモザイク状の雑然としたカオスな感じも嫌いではなくなった。

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池袋の陸橋から眺める。

「珈琲蔵」は西口のロマンス通りを抜けてちょっとしたところにある。以前に夜来たとき,大声で騒いでいた酔っ払いを店主が一喝して追い出したのが印象深い。今回もアイス珈琲は相変わらず香り高く,やはりここに来て正解だった。目の前でアイス珈琲の抽出を見られるのも興味深い。

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Kindleで本を読みながらしばらく涼む。そしてせっかくだからもう少し池袋を味わいたいなと思い,今度はウイロード(地下道)で東口に戻ることにした。ここは自転車を押して何度通ったことかわからない。昔はとにかくションベン臭くて「どこがWe Roadなんだよ!」と思っていたが最近はそんなこともなくなり,さらにアートな空間として整備されるらしい。

ikebukuro.keizai.biz

 

東口に戻り,いつもどおり長蛇の列になっている「無敵屋」を横目にジュンク堂へ入る。少し前まで,毎週新刊書籍をチェックする書店は池袋のジュンク堂だった。いまではそれは神保町の東京堂書店になっている。何も買うつもりはなかったが,好きな漫画家である施川ユウキフェアや気になる社会学の本などを5冊ほど買って帰途についたのだった。

 

そもそも池袋から足が遠のいてしまったのは,一人暮らしを始めた結果少し遠くなって自転車で行きにくくなってしまったことと,TOHOシネマズがないことが原因だ。新宿,渋谷と繁華街を網羅しているTOHOシネマズがなぜ池袋にはないんだ!と思っていたら,なんとTOHOシネマズは2020年夏をめどに10スクリーンを擁する巨大シネコンを池袋に作るのだとか。グランドシネマサンシャインができて驚いていたが,さらにTOHOシネマズもできるとは。数年前から「池袋を文化と芸術の発信地にする」という話は聞いていたが,これは思った以上に壮大な計画なようだ。

www.tohotheater.jp

 

池袋は,私が知っている20年ちょっとの間で大きく変わってきた。そして今後数年の再開発でさらに大きく変わっていくのだろう。もちろん見知った街が変わっていく寂しさはあるが,いまはむしろ,新しいことが始まっていく予感でわくわくしている。そしてそれをぜひ見届けたいと思う。

 

終わり。