たれかなれをかえりみるものあらんや
忘れ去られたもの。
打ち棄てられたもの。
汚れてしまったもの。
顧みられることのなくなったもの。
いわゆるアンティークとは一線を画する存在。
錆と埃に塗れた存在。
いまはひとびとに忘れ去られてしまったけれども、それぞれの物語を持った存在。
かつてはひとびとに愛されていた存在。
わたしが廃墟や廃線に関心を抱くのは、それがそういうものだからだ。
昨日見かけた、北王子支線の線路跡。
踏切や線路は残っているが、今では誰も使うものはない。
打ち棄てられた線路跡の先に転がる、これまた打ち棄てられたビニール傘が象徴的だ。
ビニール傘という、消費社会のシンボルのような物質が打ち棄てられ、線路跡の行く手を塞ぐように転がっている。
時代に見捨てられたこの線路をよく表していて、大変フォトジェニックだった。
誰も顧みなくても、わたしだけはそれを見つめている。ずっとずっと、いつまでも。