イベリア半島・レコンキスタの旅(マドリード~リスボン編)
先日,バルセロナに行った記事を書いた。
前回の記事が思いの外長くなってしまったので,分割しここからはスペイン・マドリードとポルトガル・リスボンに行った記事を書いていく。さて前回の記事にも書いたとおり,バルセロナのSants駅からマドリードのAtocha駅まで乗っていく予定だった高速鉄道Renfeがストライキでキャンセルになってしまった。どうしたもんか。
◯ストライキでキャンセルに
とりあえず,キャンセルに怒れる乗客たちが集まっているカウンターがあったのでそこに向かう。前にいた若い女性がブチ切れているのを尻目に,駅員にどうすればいいんだと聞くと1時間半後の列車に乗れ,と指示され代わりの切符を渡される。駅員は謝罪もなく適当ではあるが,日本でお客様がキレていて駅員が平謝りしている姿を見ていると,日本も海外のようにあるべきだと思う。
一等車両だったので,車内ではサンドイッチなどの軽食が出る。また,Cavaというスパークリングワインも出る。なかなかにリッチな気分である。
◯マドリードに到着
さてさて,何はともあれマドリードに到着。ここはスペインの首都である。
スペインといえば闘牛!というイメージは強いと思うけれども,実はバルセロナでは闘牛は法律で禁止されている。スペインの闘牛では本当に牛を殺してしまうため,動物愛護団体からの猛抗議を受け2011年に法律で禁止されたのだそうだ。なので,バルセロナでは闘牛を見ることはできなかった。
マドリードではまだ闘牛は行われているのだが,オンシーズン(5・6月)以外は毎週日曜日しかやっていない。意外と闘牛を見るチャンスは少ないのだ。
マドリード滞在が闘牛開催日とかぶらなかったので,とりあえず闘牛場だけ見に行ってみる。マドリードで最もよく知られるラス・ベンタス闘牛場だ。どこかコロッセオに似た雰囲気を感じる。
どうやら闘牛がない日はなかを見学できるらしい。入ってみると,なにやら若者たちがずっと走っている。将来の闘牛士なのだろうか,もしくはどこかの部活の練習なのだろうか。
続いて,世界三大美術館にも数えられるプラド美術館へ。ここは内部は撮影禁止なので写真がほとんどないが,ゴヤ(「我が子を食らうサトゥルヌス」をはじめとする黒い絵シリーズもあった)やベラスケス,エル・グレコの絵画などを見ることができた。
さて,予約の時間が迫っていたので,スペイン王室がかつて暮らした宮殿である王宮に向かう。内部は基本的には撮影禁止だが,ロビーにある大階段と最初の部屋だけは撮影可となっている。50以上の部屋を見学することができ,そのなかにストラディバリウスが飾られている部屋もあり,「ああ,あの……」と感動した。私にとっては『ブラックジャック』と正月の格付けチェックでしか知らない代物だけれども。
王宮を後にし,マドリードのプエルタ・デル・ソル(太陽の門)という素敵な名前のエリアへ。ここは人も多くとてもにぎやか。ここには可愛らしいコケモモの木とクマの像が立っており,マドリード市の紋章にもなっているのだそう。
また,正直日本だと学園祭とディズニーランドのイメージが強いチュロスはスペインのおやつらしく,これを濃厚なチョコレートにディップして食べるのが伝統なのだとか。
さて,チュロスの超人気店・サンヒネスに来てみた。100年以上の歴史あるカフェで,店内には有名人の写真がいっぱい。サクサクのチュロスと,これでもかってくらいに濃厚で甘く溶けたチョコレートが異常にマッチする。これは美味い。
◯サイフをスられる
ここで重大事件が発生。一緒に来ていた親がサイフをスられてしまった。というか落としたのか?よくわからないが,とにかくサイフがロストしてしまった。大ピンチ!なんとか現地の人にマドリード警察署まで連れて行ってもらい,あーだこーだと説明して調書を作ってもらう。なかなか疲れたが,貴重な体験だった。あと,助けてもらった現地の人(Alshyさん)が良い人すぎた。Uberで車を呼んで警察署までついてきてくれて,帰りはホテルまで送り届けてくれた(いい思い出で帰ってほしいから!と車代も全部出してくれた)。Alshyさん,本当にありがとう!この恩は一生忘れない。
◯リスボンに到着
さて,ポルトガル編。マドリードからリスボンまで飛行機で1時間くらい。ポルトガルでは干したコッド(タラ)を使った料理・バカリャウが有名で,色んなところで食べた。
リスボンはサグラダ・ファミリアみたいな目立つ観光地はないが,美しい街並みとそこを駆け抜けるトラムが本当に可愛らしく,絵になっている。また,とにかく坂が多いため,移動の足として5系統あるトラムやバスをフル活用することになる。トラムには丸っこい旧式と長細い新式があるが,だんぜん旧式のほうが可愛らしい。
また,リスボンではリスボアカードというものを購入した。これはトラムやバス,メトロなどの公共交通機関が乗り放題になるうえに観光名所がタダになったり割引になる大変優れたカードだ。
まずは多くの人が行き交うコメルシオ広場にある勝利の門に上り,眺めを楽しむ。丘の上にあるアルファマ地区も望める。リスボンはテージョ川が大西洋に流れ込む河口にある都市なので,目の前には大きなテージョ川が広がっている。
ポルトガルには大航海時代の修道院や城が残っており,それを見て回る。おもにテージョ川沿いのベレン地区には,世界遺産のジェロニモス修道院や要塞であるベレンの塔,大航海時代を称える発見のモニュメントなどが点在しており見ごたえがある。
発見のモニュメントにはエンリケ航海王子やヴァスコ・ダ・ガマ,フランシスコ・ザビエル,ヴァストロメウ・ディアスなど大航海時代にまつわる人物が彫られていた。
モニュメントの上に登ることもできる。かなり眺めもよく,ベレン地区が一望できる。
また,トラム内で居合わせたおばあさんが「ホントアレは美味いよ!」と教えてくれたエッグタルトの有名店・パステイス・デ・ベレンに行ってみる。知らなかったが,エッグタルトはポルトガル名物なのである。そしてこのお店はエッグタルト発祥の地なのだそうだ。
すごく並んでいたのでテイクアウトして外で食べてみると,まだ温かい。皮はサクサクでなかのクリームは濃厚で,確かにこれは今まで食べたエッグタルトとは一味も二味も違う。別の料理なんじゃないかってレベルで美味しかった。
トラムのなかでもトラム28という系統の路線は観光地を網羅しており,乗っているだけで楽しい。これはいつも混んでいるので,始発駅から乗らないと座れないし満員で乗れないこともしばしば。こいつに乗って丘の上にあるアルファマ地区をぐるっと回る。自動車に混ざって急な坂を大勢の乗客を乗せてガタピシ言わせながら登っていくトラム,なんて健気なんだ。
あとなぜだか,やたらトゥクトゥクを見かける。東南アジア限定だと思っていたら,いつの間にか生息範囲を広げていたのか。
アルファマ地区で有名な風景といえば,カテドラルとトラムである。よく絵葉書などにも使われている。そして実際に見てみると,確かにこれは絵になる。ただここはバスやトゥクトゥクが多く,なかなか写真が撮りづらいのが難点。
また,旅行中に無料で入れる教会はとてもありがたい存在だ。タダで座ってマップを見たり休んだりできるし,しかも結構涼しい。これが神の救いかと天井を仰ぐと,美しいバラ窓が目に飛び込んでくる。教会,本当にありがとう。
この辺は丘なのでどこも眺めが良い。737系統のバスでサン・ジョルジェ城まで上り,そこから徐々に降りていく。古城からの眺めは最高である。
下っていく途中にあるサンタ・ルジア展望台ではポルトガルで有名な花,ブーゲンビリアが咲き誇る。展望台に飾られている,ポルトガルのタイルであるアズレージョの青も素敵だ。
展望台近くのお店でランチ。眺めが良いとごはんも美味しいものだ。バカリャウの美味しさもさることながら,イワシの炭火焼きはなんとも和風な料理で懐かしさを誘う。どうやらイワシはバカリャウと並び,ポルトガルではよく食べる国民食なのだそうだ。
リスボンは高低差が大きいため,街中をケーブルカーが走っているのも面白い。最も有名なビカのケーブルカーに乗った。黄色く丸っこい車体でぱっと見,トラムに似ているがこちらはかなりの高低差を結んでいる。あとちょっと面長。なかなか発車しないなと思ったら運転手がすぐ横のカフェでずっとメシを食っており,みんなそれを待っているのもなんとも微笑ましい。日本だったらオッサンがキレているところだろう。
また,坂が多く高低差が大きい街並みということもあり,エレベーターが移動手段として利用されてきた。もっとも,現在ではほぼ観光のみであるが。サンタ・ジュスタのエレベーターは100年以上の歴史のあるエレベーターということもあり,観光名所となっている。
なお,このエレベーターは2基稼働しているがどうしてなかなか効率が悪く,改札がエレベーター内にありそこでチケットの購入をする(前述のリスボアカードが利用可能)ため異常に進みが遅い。たいした行列ではなくても1時間くらい待つことになる。初日に並んだときはスタッフが「ちょっとした問題が起きた。まあちょっとしたもんだ。あと30分もあればみなさんにアナウンスができるはずだ」みたいなことを言い出したので「あっこれ動かないやつだな」と思い次の日に回した。案の定,その日はその後もずっと動かなかったようだ。
しかし,待った甲斐もあり,エレベーターで登った先には素晴らしい景色が広がっていた。思わず美しい街並みに言葉を失った。
ちなみにこのエレベーター,降りるとすぐ近くがレストランになっている。そしてそこからどうやって下に降りるのかが大変わかりにくい。一緒に上がってきたティーンエージャーの女の子数人と一緒にあっちでもないこっちでもないとウロウロし,やっと降りることができた。
降りた先でレストランを探し,気になっていたオリーブのパスタやサーモンを食べる。リスボンでの最後の食事である。
夏のヨーロッパの長い日も完全に落ち,明日は日本に向けて発つ日。名残惜しく,夜のコメルシオ広場をウロウロする。滞在日数は短かったが,海に面していて魚介料理が多く坂も多い,どこか日本にも似た(そもそも日本はポルトガルの影響を受けまくっている)この街がすっかり気に入ってしまった。絶対にまた来るぞ!と誓い,リスボンを後にしたのだった。
さて,旅行記は以上で終わりであるが,記事の結びでひとつ触れておきたい。ポルトガルの街でやたらと見かけたものがある。それは電動キックボードである。
色んな種類の電動キックボードがあるが,要は乗り捨て自由なシェアリングサービスなのだそうだ。スマホ端末のアプリで利用登録を行うらしく,最近日本でも目立つ自転車のシェアリングサービスと同様にも思える。ただ自転車よりもかさばらず気軽に利用できるのがメリットだろうか。
調べてみると,早ければ年内にも日本に電動キックボードシェアリングサービスの大手が参入するとリリースがあるようだ。ただ,以下の記事にもあるように安全性や景観を損ねかねない(現に上の写真にあるように,発見のモニュメントでは電動キックボードが散乱していた)という問題をはらんでいる。
今後日本でもさらに議論がされてくるであろう問題だけに,それを先取りして見ることができたのは面白かった。
終わり。