冷たい水の中をきみと歩いていく

平坦な戦場で生き延びること

コーヒー&チキンカレー

頃,めっきり寒くなった。僕は寒いのが何よりも嫌いなので(寒いとバイタルサインが低下していくのを感じるので),早くも自宅のホットカーペットと暖房をフル稼働させ,ふかふかのスリッパを履いて毛布に包まっている。冷え性なので指先や足先がとにかく寒い。ユニクロヒートテック毛布は一生売り切れているので一生買えない。

 

さて,僕は寒いとコーヒーを淹れる。今さっきも淹れていた。これは大学生になってからの習慣だ。コーヒー豆を入れたキャニスター缶の蓋を開けると,いい香りが漂ってくる。これを取り出し,ミルに入れてガリゴリガリゴリと豆を挽いていく。あとはペーパーフィルターをドリッパーに備え付け,挽いたコーヒーの粉を入れてドリップ用ケトルで沸かしたお湯を細く円を描くように注いでいく。コーヒーの粉が膨らんでいき,一滴一滴が抽出されていくのを眺めるのも楽しい。

 

インスタントコーヒーのバリスタも持っているので,平日の時間がない朝などはワンタッチでコーヒーを淹れてしまうことも多い。しかし休日など時間があるときには一手間加えて自分でコーヒーを淹れ,豊かな香りを楽しむことにしている。

 

会社の昼休みにはセブンイレブンのコーヒーを買ってデスクに戻るようにしているし,3時頃にはまたコーヒーを買っている。たぶん1日に1リットルくらいコーヒーを飲んでいると思う。逆にコーヒーを飲まないと,眠気で意識を保っていられない。昼間はいつでも眠い。夜はあまり眠くない。

 

しかし,コーヒーを飲めるようになったのは高校生くらいからだった気がする。それまではどうやって眠気覚まししていたのか,今となっては思い出せない。授業中は結構寝ていたような気もする。

 

小学生の頃は,コーヒーを飲もうと思ったこともないと思う。存在も認識していたか怪しい。基本的にジュースか炭酸かミルクティーばっかり飲んでいた小学生だった。しかし中学生になると,「マックスコーヒー」の缶を飲んでいる同級生が周りに現れはじめた。あれは今考えると激甘で,もはやコーヒーでもなんでもないのだが,「コーヒーを飲んでいる」という事実に「すげー!かっけー!!」と彼らに惜しみない賞賛を送っていた。

 

余談だが,僕は中学生の頃にペットボトルのマックスコーヒーを一度だけ見かけたことがあった。それが気になって気になって仕方がなかったが,その後まったく出会うことができなかった。数年後,高校生になった僕はマックスコーヒーのことなどすっかり忘れていたが,ふとしたきっかけでそれは千葉や茨城などでしか流通していないという情報を得た。さっそく千葉県に向かったところ普通に売っており,無事購入することができた。すでにその頃の僕にはそれは甘すぎ,到底すべて飲みきることはできなかったのだが。甘いんだか苦いんだかわからないような思い出である。

 

さて,高校生になると微糖缶コーヒーを飲めるようになった。また,試験期間にはなぜか池袋東口にある地下のルノアールに行ってみんなでアンチョコを作っていた。当時の僕からするとルノアールはとってもオトナな雰囲気のお店だった。受験期になると,池袋河合塾近くのベローチェでクソ安いコーヒーを飲んで勉強したり,ちょっと懐に余裕があれば上島珈琲店で黒糖ミルクコーヒーを飲んで勉強したりしていた。しかしまだこの頃は無糖のコーヒーは飲めなかったと記憶している。

 

2011年,僕が大学生になったときのエピソードで,とても憶えていることがある。高校の友人たちと池袋にかつてあった名喫茶店「ハイマート」で当時放送中だったアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の話でだべっていたときのことだ。「おまたせしましたー」と僕の注文したアイスコーヒーが運ばれてきた。そこで僕は何のためらいもなくテーブルにあった角砂糖を入れようとした。すると彼らは「おいおいおい」と制止してきた。「えっなに?」そう,そのとき僕は知らなかったのだ。アイスコーヒーに角砂糖を入れても溶けないということを。そのときは「おまえは世間知らずだからしょうがないな」の一言ですまされてしまったが,「俺は世間知らずなのか……」と深く心に刻まれた。

 

上述のエピソードが関係あるのかないのかわからないが,大学に入ってからよく喫茶店に行くようになった。カッコつけてんじゃねぇよと言われてしまえばそれまでだが,その頃は喫茶店で文庫本を読むのがカッコいいと思っていた時期だった。

 

先に書いた池袋の「ハイマート」はもしかしたら回数三桁行ったかもしれない。友人との待ち合わせはもちろん,ひとりでジュンク堂書店で買った本を読んだりしていた。ランチセットのカレーも安く美味しく,窓際の席から頬杖をついて外を眺めていた。何回も書いているが,『自虐の詩』の幸江さんによく似た店員さんやツインテールのキビキビ働く店員さんがいた。

 

渋谷の「名曲喫茶ライオン」は道玄坂のラブホ街を抜けた先にある。店内は撮影厳禁で立派な音響機器が設えられておりクラシックが流れている。いつもアイスコーヒーばかり頼んでいた。近くにあるカレーの「ムルギー」のゆで卵の輪切りを乗せたカレーを食べてから心地よいクラシックに身を委ねていた。

 

神保町の言わずとしれた有名店「さぼうる」「ラドリオ」「ミロンガ・ヌオーバ」も何回行ったかわからない。「ボンディ」「共栄堂」「ガヴィアル」あたりでカレーを食べてから,東京堂書店や書泉やボヘミアンズ・ギルドで買った本を読むのにぴったりだった。

 

こうしてみると,やはりカレーとコーヒーというのは切っても切り離せない関係のようだ。ちなみに僕はカレーのなかではチキンカレーがダントツで好きだ。そして「カレーはやっぱりチキンカレー」というフレーズがぱっと浮かんでしまうのは,やはり世代なのだろう。

 

僕はタバコを吸わないので,コーヒー&シガレッツならぬコーヒー&チキンカレー,という題になった。チキンカレーではなんだか締まらないが,それもそれで自分らしくてよいのではないか。

 

終わり。