アフロがデカすぎるひとの話
昨日,早稲田松竹という高田馬場にある映画館に行ってきた。ここは最近では少なくなった「二本立て(同一料金1,300円で2本映画が観られる最高のやつ)」の名画座である。かなり上映作品のチョイスが良いので学生の頃から定期的に通っている。
ちなみに観てきた映画はジョン・カーペンター監督の『遊星からの物体X(デジタルリマスター版)』と『ゼイリブ(HDリマスター版)』である。いずれも30年以上前の映画だが,現在でもSFホラーの金字塔!などと呼ばれている。リマスター版で画質も音質もかなり向上しているとの触れ込みに期待も膨らむ。
上映まで少し時間があったので,向かいの喫茶店「エスペラント」で珈琲を飲みしばし時間をつぶす。周りの席では編集者と作家が煙草を吸いながらの打ち合わせをはじめ,大学生がオシャレな煙草を吸いながらこれから留学で行くらしいフランスのトークに花を咲かせ,おばあちゃんが煙草をふかしながらひとりで新聞を読んでいる。穏やかな昼下がりを感じつつ,私はiPadでdマガジンを読み上映時間を待つ。
ところでみなさんは映画館でどこの席に座るのがすきだろうか。だいたいの映画館は左・中央・右と3つに島が分かれていると思うが,私は中央の島の両端に絶対に座るようにしている。一番良く観えるのはたぶん中央の島の真ん中の席なんだろうけれども,出入りする際に「アッ……スマセン……スマセン」と言いながら座ってる人の前を通るのがとにかく嫌なのでいっつも両端に座る。そういえば大学生の頃も講義ではいつも端っこに座って,飽きてくるとスッと退出するようにしていた。両端はアクセスがいいのだ。
さて,5分前になったので映画館に入る。この映画館は自由席で,入場順で席に座ることになる。スクリーンに入ると,客席は7割ほど埋まっている。平日の昼過ぎでもこんなに席が埋まっているとは思わなんだ。これは誤算。「中央の島の両端」が埋まってしまっているかもしれない!急いで中を見渡す。
奇跡的に一箇所だけ空いている。やった!と内心ガッツポーズをキメながら足早にその席に荷物を置き,ひとまずトイレに向かう。上映1分前くらいに戻り,安堵感とともに席に着く。
するとすぐさま「ん?」という違和感がある。なんだろう,視界になにかチリチリしたものがちらつくぞ……。
そう,前のひとの頭が物理的にでかかったのだ。ただでさえ背が高いひとで,さらに座席からはみ出しているパパイヤ鈴木みたいなでかいアフロ。「おいちょっと待て席変える!!!」と腰を上げたが時すでに遅く,上映を告げるブザーが鳴る。たぶんその席が空いていた理由はそれだったのだろう。諦めて再び腰を下ろす。
・・・明らかにチリチリしたアフロがちらつく。ちょっと泣けるシーンやシリアスなシーンでも常にアフロが視界の片隅にある。しかしこのアフロの人も上映中にスマホを見たり飲食で大きな音を立てたりとマナー違反をしているわけではない。なんなら鑑賞マナーはすごくいいひとだった。ただアフロがでかすぎるだけで……。罪を憎んで人を憎まず,アフロを憎んでアフロの人を憎まず。
ちなみに映画はどっちも面白かった。
『遊星からの物体X』は「物体」の造形がとにかくグロテスクで,人間に擬態する彼らをあぶり出すシーンの緊張感がすさまじかった。意味深なラストも良かった。
『ゼイリブ』は世界の「本当の姿」がかくもおぞましく,しかもそれがエイリアンによって作り出されて大衆が「幸福だと思わされている世界」だという衝撃,現代社会に照らし合わせても通ずる空恐ろしさがあった。
終わり。