冷たい水の中をきみと歩いていく

平坦な戦場で生き延びること

無題

勿忘草

 

わすれてしまったわたしの昔

 

わたしの何がわかるの、とあなたは言った

わかるわけがない

わたしはあなたではないのだから

 

わかってくれないのね、とあなたは言った

わかるわけがない

わたしはあなたではないのだから

 

わかるわけがない、

わかるわけがないよ…

わたしは、そう言ってあなたを遠ざけた

 

わかりたくなかったのだ

わたしにあまりによく似たあなたを

わかってしまえば

わたしはわたしでいられなくなる気がしたから

 

わかられたくなかったのだ

わたしが大したことない人間だということを

わかられてしまえば

わたしはわたしを許せなくなる気がしたから

 

わたしはわたしをわからないまま、

わけもわからないまま、

わたしはわたしをわすれてしまった

 

わたしは、なにをしていたのだろう

わたしは、なにを望んでいたのだろう

わたしはわすれてしまった

 

わがままかもしれないけれども、

わすれてしまった今ではもう遅いけれども、

わたしは、きっとあなたをわかりたかったのだ、そしてあなたにわかられたかったのだ

わかりあうことで、わたしとあなたがふたり出逢ってここに存在している事実を確実にしたかったのだ

 

わがままかもしれないけれども、

わすれてしまった今ではもう遅いけれども、

わたしは、きっとあなたにわすれないでほしかったのだ

わすれないことで、わたしとあなたがふたり出逢ってここに存在している瞬間を永遠にしたかったのだ

 

わたしはわからなかった

わたしはわかられなかった

わたしはわすれてしまった

わけもわからないまま、

わたしはわたしを抱えて沈んでいく

わたしはわたしの罪を抱えて沈んでいく