冷たい水の中をきみと歩いていく

平坦な戦場で生き延びること

2006年は「うどん元年」

がつくと前の記事からすっかり日が空いてしまった。本当は「年末から新年にかけてせわしなく過ごすうちに書きそびれていた」ということにしたいのだけれども,実際のところだいたい寝転んでテレビを見て餅を焼いていただけだから世話ない。

 

事前に言っておくと,今回の記事は(も)全く内容がない。思いついたことをつらつらと書いていくだけだ。テーマは「うどん」。すでに面白くなさそうだが,しばしお付き合い願いたい。

 

僕はうどんが好きだ。近所にうどんの名店が結構あるのもあり,今も週3日くらいの頻度でうどんを食べる。「週3なんて全然大したことないじゃないか。俺なんて~」というマウントを取られてしまうかもしれないけど,残りの週4日くらいは自炊なので外食すること時はほぼうどんだ。そして今日の夜ご飯も味噌煮込みうどんを食べてきた。そのなかで,ふと自分とうどんとの因縁浅からぬ関係について書いておきたいと思ったのだ。

 

思い返すと小さい頃,うどんは好きではなかった。そばとうどんだったら絶対にそばを選ぶような,こしゃまっくれた子どもだった。うどんに対して嫌悪感すら抱いていた。理由はよく覚えていないが,おそらく大したことではない。どうせ「太いから」とか「名前が嫌だから」とかそんなことだ。

 

そんな僕がうどん嫌いからうどん好きになるひとつの転機となったのは,本広克行監督の2006年の映画UDONだと思う。

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僕はこの映画を観てあまりにもうどんが食べたくなり,家族に頼んで香川県にうどんを食べに行った。中2の頃のことだ。あまりにも有名な日の出製麺所」に初めて行ったときは,150円という値段や自分でねぎを切るシステムに大変衝撃を受けた。もちろん味もとても美味しく,僕はすっかりうどんが好きになってしまった。

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そして僕は翌年の夏休みにも友人たちと香川県に行き,讃岐富士こと飯野山を背にレンタルした自転車でうどん屋を巡った。これもいい思い出だ。

 

UDON」の公開と時を同じくして2006年,実家の近くに讃岐うどんの専門店「元喜」がオープンした。今ではそこそこ有名になっており,たまに通りかかると行列になっている。ここはうどんもさることながら,味噌で食べる讃岐おでんもまた名物だ。

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今考えてみても,2006年はうどん元年だったと言わざるを得ない。そしてその10年後,2016年がVR元年だというのは偶然という名の必然だろう(?)。

 

さて,うどんを語るうえで欠かせないチェーン店がある。それは丸亀製麺である。決して「はなまるうどん」ではない。ちなみに同じく有名チェーン店である「山田うどん」は近所になく,いまだに行ったことがない。国道沿いにいっぱいある気がするので,いつか国道沿いに行ったときに寄ってみたい。

 

丸亀製麺も最近はとんとご無沙汰なのだが,高校生の頃,特に高3の受験期は本当に誇張なく週10回くらい丸亀製麺だった。その頃は一日中池袋の塾の自習室にいたので,お昼ごはんと夜ごはんは外に出て南池袋公園近くにある丸亀製麺にばかり行っていた。

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店に入って注文を取られるなり一言ぼそっと「ぶっかけ冷の大」。夏でも冬でも変わらない。ブオー!という麺を乾かすデカい音が響き,10秒ほどでぶっかけ冷の大が供される。お金がないから天ぷらなんてものは頼まない。その代わりに天かすとねぎを鬼のように入れる。スプーン5杯は入れる。丸亀製麺の天かすはなかなか侮れない。サクサクしてるしたまに野菜くずが入ってて健康的な(気がする)天かすを供する心意気,素晴らしい。僕が冬でも冷うどんを頼むのも,何を隠そう天かすがふやけてしまわないようにだ。そこまで行くと,もううどんを食べに行ってるのか天かすを食べに行っているのかわからない。

 

ただ,実は丸亀製麺一筋と言いつつ,何度か浮気して近くの違う店に行ったことがある。池袋の丸亀製麺のすぐそばにあったはなまるうどんは初めて行った時にイオンで100円くらいで売ってるようなクッソしょぼい天かすしか置いてなくムカついたのでそれ以来行っていない。

 

「楽釜製麺所」という池袋にあったお店も何度か行ったが,あまり覚えていない。うどんが硬かった気がする。調べてみると,閉店が相次ぎ今は都内に2店舗しかないのだそうだ。池袋の店舗も閉店してしまっていた。

 

そうして,結局丸亀製麺に回帰してしまう。僕は丸亀製麺が大好きだった。丸亀製麺でバイトしたけど天ぷらをつまみ食いしたらめちゃくちゃ怒られてバイトを辞めた」という友人の話を聞いてから,ますます丸亀製麺が美味しくなった気がする。大学生になってからも,池袋に行けばウキウキしながら丸亀製麺に行っていた。頼むのはもちろん「ぶっかけ冷の大」。そして天かすとねぎを鬼のように入れる。そんな日々がずっと続くと思っていた…。

 

そんな一宿一飯の恩義のある(一宿はないが)丸亀製麺に最近行っていないのは,引っ越した近所に美味しいうどん屋さんが多すぎるからだ。美味しいうどん屋さん情報を貼ってこの記事を締めることにする。

 

まずイチオシは神保町の「丸香」

tabelog.com言わずとしれた名店。いりこの風味の強い出汁が本当に美味しく,都内で一番美味しいのではないだろうか。僕は夏はここのわかめうどん,冬はカルピスバター釜玉うどんを食べることにしている。そしてちくわ天。ここはちくわ天が超うまい。もう天かすばっかり食べていたあの頃の僕とは違う。ちゃんとお金を出して天ぷらを食べている。

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インパクトの強いわかめうどん。

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かけうどん。綺麗な出汁。いりこの風味がたまらない。

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カルピスバター釜玉うどん。やみつきになる。


次に「トウキョウライトブルーホンゴウスリー」。ついこの間まで「こくわがた」という店名だったのだが,リニュアルオープンした。東大の体育会系学生がよく来ている。

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立ち食いながらとても美味しいうどん。そしてここは揚げ物のクオリティーが異常に高い。あなごの天ぷらだったりさわらの天ぷらだったり鶏天だったり,何を食べても美味い。

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さわらの天ぷらうどん。卓上の醤油をぶっかけて食べる。

 

そして「味噌煮込罠」。「みそにこみん」と読む。冒頭書いた今日の夜ご飯はここ。

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僕は正直,味噌煮込みうどんとか鍋焼きうどんといったものがあまり好きではなかった。繰り返しになるが,僕にとってうどん=天かすだったからだ。温かいうどんでは天かすがふやけてしまう。

 

しかしここに初めて来た時,その価値観は覆された。のばされた味噌の濃厚な味わい。熱々の土鍋で供されるのもまた食欲をそそる。今日みたいな寒い日にはもってこいだ。

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さっき食べた味噌煮込みうどん。

番外編として,老舗そば屋なのだが,「神田まつや」の太打ち。事前に電話で予約を入れないと食べられない裏メニュー。こんな見た目だけどそばである。想像通り,歯ごたえと香りがすごい。

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裏メニューの太打ち。

こんなにたくさん素敵なうどん屋があるのだから,丸亀製麺への足が少し遠のいてしまうのも致し方ないことだ。許してくれ,丸亀製麺

 

終わり。どうぞ今年もよろしく。

コーヒー&チキンカレー

頃,めっきり寒くなった。僕は寒いのが何よりも嫌いなので(寒いとバイタルサインが低下していくのを感じるので),早くも自宅のホットカーペットと暖房をフル稼働させ,ふかふかのスリッパを履いて毛布に包まっている。冷え性なので指先や足先がとにかく寒い。ユニクロヒートテック毛布は一生売り切れているので一生買えない。

 

さて,僕は寒いとコーヒーを淹れる。今さっきも淹れていた。これは大学生になってからの習慣だ。コーヒー豆を入れたキャニスター缶の蓋を開けると,いい香りが漂ってくる。これを取り出し,ミルに入れてガリゴリガリゴリと豆を挽いていく。あとはペーパーフィルターをドリッパーに備え付け,挽いたコーヒーの粉を入れてドリップ用ケトルで沸かしたお湯を細く円を描くように注いでいく。コーヒーの粉が膨らんでいき,一滴一滴が抽出されていくのを眺めるのも楽しい。

 

インスタントコーヒーのバリスタも持っているので,平日の時間がない朝などはワンタッチでコーヒーを淹れてしまうことも多い。しかし休日など時間があるときには一手間加えて自分でコーヒーを淹れ,豊かな香りを楽しむことにしている。

 

会社の昼休みにはセブンイレブンのコーヒーを買ってデスクに戻るようにしているし,3時頃にはまたコーヒーを買っている。たぶん1日に1リットルくらいコーヒーを飲んでいると思う。逆にコーヒーを飲まないと,眠気で意識を保っていられない。昼間はいつでも眠い。夜はあまり眠くない。

 

しかし,コーヒーを飲めるようになったのは高校生くらいからだった気がする。それまではどうやって眠気覚まししていたのか,今となっては思い出せない。授業中は結構寝ていたような気もする。

 

小学生の頃は,コーヒーを飲もうと思ったこともないと思う。存在も認識していたか怪しい。基本的にジュースか炭酸かミルクティーばっかり飲んでいた小学生だった。しかし中学生になると,「マックスコーヒー」の缶を飲んでいる同級生が周りに現れはじめた。あれは今考えると激甘で,もはやコーヒーでもなんでもないのだが,「コーヒーを飲んでいる」という事実に「すげー!かっけー!!」と彼らに惜しみない賞賛を送っていた。

 

余談だが,僕は中学生の頃にペットボトルのマックスコーヒーを一度だけ見かけたことがあった。それが気になって気になって仕方がなかったが,その後まったく出会うことができなかった。数年後,高校生になった僕はマックスコーヒーのことなどすっかり忘れていたが,ふとしたきっかけでそれは千葉や茨城などでしか流通していないという情報を得た。さっそく千葉県に向かったところ普通に売っており,無事購入することができた。すでにその頃の僕にはそれは甘すぎ,到底すべて飲みきることはできなかったのだが。甘いんだか苦いんだかわからないような思い出である。

 

さて,高校生になると微糖缶コーヒーを飲めるようになった。また,試験期間にはなぜか池袋東口にある地下のルノアールに行ってみんなでアンチョコを作っていた。当時の僕からするとルノアールはとってもオトナな雰囲気のお店だった。受験期になると,池袋河合塾近くのベローチェでクソ安いコーヒーを飲んで勉強したり,ちょっと懐に余裕があれば上島珈琲店で黒糖ミルクコーヒーを飲んで勉強したりしていた。しかしまだこの頃は無糖のコーヒーは飲めなかったと記憶している。

 

2011年,僕が大学生になったときのエピソードで,とても憶えていることがある。高校の友人たちと池袋にかつてあった名喫茶店「ハイマート」で当時放送中だったアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の話でだべっていたときのことだ。「おまたせしましたー」と僕の注文したアイスコーヒーが運ばれてきた。そこで僕は何のためらいもなくテーブルにあった角砂糖を入れようとした。すると彼らは「おいおいおい」と制止してきた。「えっなに?」そう,そのとき僕は知らなかったのだ。アイスコーヒーに角砂糖を入れても溶けないということを。そのときは「おまえは世間知らずだからしょうがないな」の一言ですまされてしまったが,「俺は世間知らずなのか……」と深く心に刻まれた。

 

上述のエピソードが関係あるのかないのかわからないが,大学に入ってからよく喫茶店に行くようになった。カッコつけてんじゃねぇよと言われてしまえばそれまでだが,その頃は喫茶店で文庫本を読むのがカッコいいと思っていた時期だった。

 

先に書いた池袋の「ハイマート」はもしかしたら回数三桁行ったかもしれない。友人との待ち合わせはもちろん,ひとりでジュンク堂書店で買った本を読んだりしていた。ランチセットのカレーも安く美味しく,窓際の席から頬杖をついて外を眺めていた。何回も書いているが,『自虐の詩』の幸江さんによく似た店員さんやツインテールのキビキビ働く店員さんがいた。

 

渋谷の「名曲喫茶ライオン」は道玄坂のラブホ街を抜けた先にある。店内は撮影厳禁で立派な音響機器が設えられておりクラシックが流れている。いつもアイスコーヒーばかり頼んでいた。近くにあるカレーの「ムルギー」のゆで卵の輪切りを乗せたカレーを食べてから心地よいクラシックに身を委ねていた。

 

神保町の言わずとしれた有名店「さぼうる」「ラドリオ」「ミロンガ・ヌオーバ」も何回行ったかわからない。「ボンディ」「共栄堂」「ガヴィアル」あたりでカレーを食べてから,東京堂書店や書泉やボヘミアンズ・ギルドで買った本を読むのにぴったりだった。

 

こうしてみると,やはりカレーとコーヒーというのは切っても切り離せない関係のようだ。ちなみに僕はカレーのなかではチキンカレーがダントツで好きだ。そして「カレーはやっぱりチキンカレー」というフレーズがぱっと浮かんでしまうのは,やはり世代なのだろう。

 

僕はタバコを吸わないので,コーヒー&シガレッツならぬコーヒー&チキンカレー,という題になった。チキンカレーではなんだか締まらないが,それもそれで自分らしくてよいのではないか。

 

終わり。

 

 

晴れた日にはランチバスケットを持って。

ういえばここ1か月くらいブログを書いていないことに気がついた。とりあえず,先日行ったピクニックのことを書く。

 

先日といいつつ2週間ほど経ってしまっているのだが,大学のサークルの先輩や同輩と代々木公園にてピクニックをしてきた。

 

そもそもこれどういうきっかけだったんだっけ……?と思い返し調べてみると,どうやらTwitterでのリプライ発だった。

先輩のツイート:みんなー,遊びに行こうよ。シートを敷いてサンドイッチを持ち寄ろうよ。ウクレレをひこうよ。(意訳)

僕のリプライ:最高

 

人々が何の気もなく「飲み行こう」「メシ行こう」と口にし,それが実現することもなくあっという間に流れていくこの地獄の世の中。そのなかにあって晴れた日にシートを広げてサンドイッチを持ち寄る,豊かな時間の尊さよ。気がつくと僕は「最高」とリプライを送りつけていた。そして日程調整の結果,6人もピクニックに集まっていた。

 

僕は形から入るタイプなので,まず「うかれすぎだろ」という感じのランチバスケットを買って退路を断った。そしてうるせぇ!誰にも文句は言わせないぞ!!という強い気持ちで「理想のピクニック」を詰め込んでいった。言うまでもなく,頭の中では「君をのせて」がずっと流れていた。

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自分のなかで,どうしてもピクニックといえばバゲットであり,パン切り包丁である。また,木のカッティングボードも持っているが入り切らなかったのでやめた。オリーブとかレバーペーストとか色々はいってるのは,スペインで安かったので大量買いしたのだが帰国後一向に開封せず,いい機会だったので持っていったものだ。

11時集合だったので,少し早起きして唐揚げを作った。見た目はあんまり良くないが,初めてにしてはそれなりに食べられるものだった。

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あとメインディッシュであるサンドイッチ。僕はマヨネーズが食べられないのでレパートリーが少ないが,キュウリ・ハム・たまごサラダ・チーズの組み合わせで幾通りかのサンドイッチを作っていった。サンドイッチ用のパンというものが売っていることを初めて知った。

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で,唐揚げやサンドイッチや剥いたリンゴをタッパーに入れ,結局このような中身のランチバスケットを引っさげて原宿駅に向かった。

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自宅の最寄り駅にて電車を待つビジネスマン風の男性がビジネスバッグをおろす。そのすぐ横で僕は,籐でできたランチバスケットをおろす。ビジネスマンに二度見される。誰にも文句は言わせないぞという強い気持ちで電車に乗り込む。

原宿駅に着くと,やたらと混んでいる。今日は天気もいいし全員ピクニックに行くのかな?と頭の中ではお花畑なことを思いながら,みんなと集合して代々木公園に向かう。

 

ひさびさに来た代々木公園はやたらとデカく感じた。組体操をしているグループや大道芸人っぽい人たちを尻目に中央広場に向かって歩いていると,いい感じの芝生といい感じの木立があり,そこをキャンプ地とすることにした。レジャーシートをバサバサと広げ,荷物をおいて陣取る。

 

その日はポカポカと暖かく,絶好のピクニック日和だった。何ならちょっと暑いくらい。レジャーシートにみんなが思い思いに持ち寄ったものをバラバラと広げていく。素敵。

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周りにはフリスビーやバドミントンをやっている人たちがたくさんいたが,僕はランチバスケットの用意で手いっぱいでそのへんのものを何も用意してこなかった。僕たちは海に行っても,ビーチバレーなどせずにタイドプールでウメボシイソギンチャクをつついたりアメフラシをつついたりしているタイプだ。

 

まるで放課後のような雑談をしていたら,あたりが暗くなってきた。11月になると,5時頃にはもう日が落ちてしまう。いそいそとレジャーシートを片付けながら,僕たちは帰途についたのだった。

 

大人になるにつれて,僕たちは薄っぺらい口約束ばかりするようになる。言葉からは手触りと重みとリアリティが失われていく。小さい頃に「◯◯ちゃん,あーそーぼ!」と行ってすぐにワーッと遊びに行っていたのが,行くのか行かないのかもわからない口約束だけを重ねるようになったのはいつからだっただろう。

 

そしてそんな薄っぺらい口約束の先にある飲み会は,店で出てくる薄ーいレモンサワーよりもよっぽど中身がなく薄っぺらい。そんな飲み会なら行くだけ時間の無駄だということに僕は大学1年生の新歓期に気づいてしまった。もちろん有意義な飲み会もたくさんあるけど,たまには思い思いのものを持ち寄って,ポカポカと豊かな時間を過ごすのもとても素敵な経験だと改めて思った1日だった。

 

なおランチバスケットは小物入れとして我が家で有効活用されている。またピクニックに行くことがあれば,迷わずこいつを連れて行く。

 

終わり。

 

 

 

 

愛なき森で叫んでみた

Netflixで昨日から配信されている園子温監督の『愛なき森で叫べ』を観た。

 

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椎名桔平演じる天才詐欺師・村田丈に翻弄されて崩壊していく人々の物語。下敷きになっているのはかの悪名高い「北九州監禁殺人事件」。監督・脚本は園子温。尖ったコンテンツを制作・配信するNetflix。予告編で「人生ってジョークだよ。俺にとって壮大なジョーク」と嘯く椎名桔平を見て以来,私はとにかくこの作品が気になっていた。

 

作品の感想とか書くのは苦手なのでざっと書くに留めるが,まさに園子温監督がやりたいことを全部やっている感じの総決算的な映画だった。

 

自身の過去作のセルフパロのようなシーン(『冷たい熱帯魚』のでんでんが出演している)や,「これは別の事件も盛り込みたかったんだな」と思わせるシーン(「長野の山荘」というワードはそれ単体で別の意味を持ちうる),複数視点での物語進行などもあり,全体的に「猛毒のごった煮」といった様相を呈している。よく言えば内容盛りだくさんなのだが,悪く言えば詰め込みすぎで,主題がボケてしまって散漫な印象だ。モチーフとなっている北九州監禁殺人事件の要素はやや薄い。

 

私は監督の作品のキモとも言われる(らしい)「グロシーン」「スプラッタシーン」にはそこまで興味がない。それはどう見てもチープだなとしか思えないからで,正直なところ『カメラを止めるな!』のスプラッタシーンと大差ない。それよりもむしろ『冷たい熱帯魚』にも見られた巧みな心理描写,つまり「村田」がどうやって他人を支配していったのかに最も興味があった。

 

『愛なき森で叫べ』は2時間半の作品だが,正直なところ村田が一家を乗っ取るまでの描写は短く割とあっさりしている。だからそんなにあっさり人間を支配できるかな,と疑問に思ってしまう。でんでんは『冷たい熱帯魚』のように村田を透明にしてやればよかったじゃん(あっちではでんでんが村田だったけど)

 

前述の通り,この映画は猛毒のごった煮である。それは事件に巻き込まれていくミツコとタエコの過去を同性愛的な『自殺サークル』『リップヴァンウィンクルの花嫁』を思わせる退廃的な雰囲気で描いていたり,作中で撮られている映画で役者が村田の役を演じるうちに村田にのめり込んでいくという二重構造を描いていたりと,とにかくたくさんの展開があるからに他ならない。なので欲張った結果,心理描写はややあっさりで不自然だと言わざるを得ない。

 

しかしそれでも,この映画は2時間半とは思えないような異常に濃い「事件」を見せつけて我々をぶん殴ってくる。その意味で園子温監督の総決算的な作品だと思う。当初思っていたものとは違っていたが,これはこれで大満足な作品だった。

 

話は変わるが,新しい園子温作品を観るたびに,初めて観たときのことをハッキリと思い出す。おそらくそれは,多くの(特に犯罪を扱った)園子温作品には「実在の事件にインスパイされて作られた」という共通点があるからだろう。後述の『愛のむきだし』は部分的にだがオウム真理教事件,『冷たい熱帯魚』は埼玉県愛犬家連続殺人事件,『恋の罪』は東電OL殺人事件をモチーフにしている。

 

大学2年生の頃,友人Mに誘われてオールナイトの劇場で『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』『恋の罪』を観たのが園子温作品との出会いだ。私は遅れて行ったので『愛のむきだし』の後編(この映画は4時間近いので途中で休憩が入る)らへんから入場して観ていたのだが,観終わったころにはすさまじい「猛毒」にやられてすっかり意識は朦朧としてしまっていた。覚束ない足取りのなか,劇場を出た瞬間に目に入ってきた朝日の眩しさは,今まで観ていた陰鬱な映画との対比もあって印象的だった。

 

その後調べてみると昔読んだ古屋兎丸氏の漫画『自殺サークル』と同名の映画を撮っていたことを知り,その前日譚の『紀子の食卓』もあわせてTSUTAYAでレンタルして観たりしていた。古屋兎丸氏はなぜか『愛のむきだし』に出演している。ちなみに宮台真司氏もなぜか出演している。

 

園子温監督が原発事故をモチーフにした『希望の国』を公開したとき,早稲田大学で公開イベントということで試写会を開催していた。友人Mに教えてもらってふたりでウェブから申し込んだが,タッチの差で彼は先着順に間に合わず,私一人で観てきた。ちなみに上映後は園子温監督も登壇したのだが,私は映画が観たかっただけなので終わった途端に帰った。いま考えても自分らしいエピソードだと思う。

 

なお,自覚しているとおり,私は熱しやすく冷めやすい性格なので大学3年生になる頃には園子温監督熱もちょっと冷めていた。しかし不思議なことに,そのタイミングでまたしても園子温作品と出会うことになる。

 

大学3年生の頃,友人Mたちと車で旅行に行った。大阪西成のスナックで飲んでいたとき,店内のカラオケでMが星野源地獄でなぜ悪いを歌い出したのだった。この曲は園子温監督の同名映画の主題歌である。

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ふだんは寺尾聰とかが流れてそうな店内にマッチしない選曲に,スナックのママは「あらお兄さんいい曲ね」なんて言っていたが,確かにめちゃくちゃいい曲だしMVもめちゃくちゃよかった。そして星野源を知ったのもこのときが初めてだった。ちなみにこの映画では星野源は俳優としてもいい役を演じている。

 

このように,私にとって折に触れて不思議な出会いをさせてくれるのが園子温作品なのだ。一作一作が強烈なため,その出会いはなかなか忘れがたいものなのだ。

 

さて,最後に。園子温監督は今年の2月に心筋梗塞で倒れたことでニュースになっていた。

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そして監督は『愛なき森で叫べ』が大変すぎてぶっ倒れたんだ,とも語っている。真偽のほどはわからないが,園子温監督が文字通り命を懸けて作った本作,観る側にも相当の覚悟と胆力がいるのは間違いない。猛毒でぶん殴られる覚悟を決めて観ることをおすすめする。

news.dwango.jp

 

終わり。

池袋ウエストゲートパークサイドホテル

日,10日間限定で中国アニメ映画を上映するということで池袋HUMAXシネマズに行ってきた。お目当ては『羅小黒戦記』という中国のアニメ映画。ツイッターのフォロワーさんで結構観に行っているひとがいたので気になっていたのだ。中国で大人気アニメ『羅小黒』の劇場版らしく,You Tubeで予告編や微博にアップされていたMVなどを観てから行った。

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いやー,すごく面白かった。ストーリーはわかりやすい王道ものであり,しかしだからこそ,最近の日本では見ることが少なくなった作品だ。私はむしろこういう作品のほうが好きだ。あと主人公の「クロ」がとにかく可愛いし,結果的に彼と行動をともにする人間の「無限」はとにかくかっこいい。ふたりがツンケンしながらも歩み寄っていくさまは,本作のひとつの見所だ。

 

今日の9時からの上映だったので,11時前には映画館から出た。そういえば池袋HUMAXシネマズに来たのなんて何年ぶりだろう。確か大学の後輩がチケット売り場でバイトしてて出くわしたことがあったななんて思い出した。お昼時にはまだ少し早いかな,なんて思いつつ久々にサンシャイン通りを歩いてみた。ときおり昔を思い出しながら。

 

私と池袋との付き合いは長い。小さい頃,親と買い物に行くときはだいたい池袋だった。いまはヤマダ電機となってしまった三越デパート。広いレストランでお子さまランチをよく食べて旗を持って帰っていた。昔は本物の鐘が鳴っていたビックカメラ。近くの塾に通っていたら鐘の音がうるさかった。すっかり綺麗になった西武デパート。屋上の遊園地のような施設のボールプールでよく遊んだ。いまはGUになってしまったキンカ堂。ベンチに座って店内に設置されていたテレビで大長編ドラえもんをよく観ていた。幼稚園受験で通っていた幼児教室。同じビルのミルキーウェイにもよく行った。

 

中高生になると遊ぶ場所はだいたい池袋だった。HUMAXかシネマサンシャインで映画を観た。ハイパーレーンやロサ会館やブランズウィックでボウリングをした。ブランズウィック横のゲームセンターやランブルプラザでゲームをした。アメニティドリームやイグニスで遊戯王カードを買った。友人たちとラーメン本を買っていろいろなラーメン屋さんを開拓した。文化祭の打ち上げで風々亭や鍋ぞうで盛り上がった。夏休みに部活サボって漫画喫茶マンボーの3時間パックで過ごしたりブックオフで立ち読みしてたりアドアーズでゲームした。本当に思い出は尽きない。

 

大学受験期にも池袋の塾に通っていた。当時は汚かった池袋南公園近くの丸亀製麺で毎日お昼を食べていた。ぶっかけ冷の大に天かすをしこたまかけてご飯代を浮かせ,浮いたお金でサンシャイン通りにあったとらのあなに通った。オタクたちが足繁く通った汗臭いとらのあなも,いまはJTBの綺麗なビルになっている。兵どもが夢の跡。また,塾の友人と映画館で『トイ・ストーリー3』を観て号泣したり,彼らと児童館でバスケをして塾の説明会に遅刻して怒られたのもいい思い出だ。

 

大学生になると喫茶店(カフェではない)に通うことが増えた。友人に教えてもらった「ハイマート」という喫茶店はとりわけ思い出深い。ここはいまでは珍しくなった全席喫煙可のお店。すごくよく働くゴスロリのおねえさんとか,業田良家自虐の詩』の幸江さんを彷彿とさせるおばさんとか,店員さんも個性的だった。放っておかれる感じが好きで,待ち合わせにもよく利用したし,本当に足繁く通った。珈琲1杯で数時間粘るなど嫌な客だったに違いない。ランチセットも美味しく,プリンが地味に名物だと知ったのはだいぶ後年であった。ここもいまでは「椿屋カフェ」になってしまった。「蚤の市」や「戸論戸」,「蔵」など池袋は好きな喫茶店が多くある。これも再開発でなくなってしまったが,池袋中公園前にあった池袋保健所にあった喫茶店(名前を失念してしまい調べてもわからなかった)も一回しか行かなかったが印象に残っている。確かエレベーターでは行けず一個下の階から階段で行った気がする。

 

さて,お昼ごはんはあれこれ迷ったが,結局個人的に池袋で一番美味しい魚定食を出すと思っている「ずぼら」へ落ち着いた。美久仁小路の入り口にあるこのお店は引き戸ということもあり一見入りにくいが,大学生の頃に入って以来,魚が食べたいなと思ったらここに来ている。夜は居酒屋になっており一回だけふらっと来たことがある。そのときは刺身とかハムカツとかつまんだっけ。

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池袋は,いまでは少なくなったものの美久仁小路や栄町通りに代表される小路がいっぱいある街だった。とりわけ有名だったのは「人世横丁」だが,すでに解体されいまでは石碑が残るのみとなっている。

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人世横丁を偲ぶ石碑。

池袋の小路でいえば,いまでは影も形もないが「ひかり町」というのが思い出深い。いまのROUND1があるあたりには昔そういう名前の小路が存在していた。入り口にでっかく「ひかり町」と書かれており,その下に漫画風の絵が描いてあった。調べてみると,それは往時そこにあった店主たちの肖像なのだそうだ。なんとなく気にはなっていたのだが,基本的に飲み屋が集まっている通りなので昼間は閑散としていてなんだか怖かった。初めて足を踏み入れたのは中2の頃に友人とふたりでだった。きょろきょろしながらおっかなびっくり進んでいくと,なぜかでかいスコップが放置してあったり違法っぽいポルノDVDを売ってそうな店などあったが,怖くて到底そこに入ることは叶わなかった。10年以上前にここはなくなってしまった。近くにあった「テアトルシネマ」や「ウェンディーズ」もユニクロになってしまい,一抹の寂しさを憶える。

 

そういえばシネマサンシャインはなくなって旧ブランズウィックのあたりにグランドシネマサンシャインが出来たんだったと思い出し,映画は観ないが立ち寄ってみる。

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……めっちゃでかい。映画館は4階がロビーになっていて,そこでチケットを買うシステム。エスカレーターの導線があまり良くないので結構混み合いそうだ。エスカレーターの壁面に往年のポスターが貼られていてクラシカルな雰囲気も醸し出している。そして屋上にはバッティングセンターがある。ブランズウィック時代からここの屋上にはバッティングセンターがあった。たしかボウリング場が閉鎖されたあともバッティングセンターだけはしばらく営業していたはずだ。そういえばブランズウィックにはランチ食べ放題の「大福来」という中華料理屋も入っていた(一回だけ行ったけどあまり美味しくなかった)けど,どうなったんだろう。

 

それにしても今日は暑い。アイス珈琲が飲みたくなってきた。池袋で一番美味しいアイス珈琲を出す店といえば,西口にある「珈琲蔵」だ。ひさびさに行ってみようと思い,西口へ移動するために陸橋の方に向かう。

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グランドシネマサンシャインを通り過ぎ,そのまま池袋中公園の方面へ足を向ける。ここは近くにアニメイトができたおかげで,なにやらオタクたちがグッズの交換をしている光景をよく見かけたが,ここも再開発で封鎖されて入れなくなっていた。公園の目の前にある「パークサイドホテル」アニメイトができた関係で人が多く,日本一入りにくいラブホテルなんじゃないかと睨んでいる。そのまま通り過ぎて明治通りを渡り,しばらく歩いていくと西口につながる陸橋がある。そして近くで見ると豊島清掃工場の煙突は本当にでかい。210メートルあり,サンシャイン60とほぼ同じ高さなんだとか。

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3年前にふらりと撮った豊島清掃工場の煙突。

東口に比べて西口は雑然としている。陸橋から見える景色は「ファッションヘルスイカ」や「ソープランド若葉」やラブホテルや飲み屋ばかりで,西口には小さい頃は立ち入ったことすらほぼなかった。いまではそういうモザイク状の雑然としたカオスな感じも嫌いではなくなった。

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池袋の陸橋から眺める。

「珈琲蔵」は西口のロマンス通りを抜けてちょっとしたところにある。以前に夜来たとき,大声で騒いでいた酔っ払いを店主が一喝して追い出したのが印象深い。今回もアイス珈琲は相変わらず香り高く,やはりここに来て正解だった。目の前でアイス珈琲の抽出を見られるのも興味深い。

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Kindleで本を読みながらしばらく涼む。そしてせっかくだからもう少し池袋を味わいたいなと思い,今度はウイロード(地下道)で東口に戻ることにした。ここは自転車を押して何度通ったことかわからない。昔はとにかくションベン臭くて「どこがWe Roadなんだよ!」と思っていたが最近はそんなこともなくなり,さらにアートな空間として整備されるらしい。

ikebukuro.keizai.biz

 

東口に戻り,いつもどおり長蛇の列になっている「無敵屋」を横目にジュンク堂へ入る。少し前まで,毎週新刊書籍をチェックする書店は池袋のジュンク堂だった。いまではそれは神保町の東京堂書店になっている。何も買うつもりはなかったが,好きな漫画家である施川ユウキフェアや気になる社会学の本などを5冊ほど買って帰途についたのだった。

 

そもそも池袋から足が遠のいてしまったのは,一人暮らしを始めた結果少し遠くなって自転車で行きにくくなってしまったことと,TOHOシネマズがないことが原因だ。新宿,渋谷と繁華街を網羅しているTOHOシネマズがなぜ池袋にはないんだ!と思っていたら,なんとTOHOシネマズは2020年夏をめどに10スクリーンを擁する巨大シネコンを池袋に作るのだとか。グランドシネマサンシャインができて驚いていたが,さらにTOHOシネマズもできるとは。数年前から「池袋を文化と芸術の発信地にする」という話は聞いていたが,これは思った以上に壮大な計画なようだ。

www.tohotheater.jp

 

池袋は,私が知っている20年ちょっとの間で大きく変わってきた。そして今後数年の再開発でさらに大きく変わっていくのだろう。もちろん見知った街が変わっていく寂しさはあるが,いまはむしろ,新しいことが始まっていく予感でわくわくしている。そしてそれをぜひ見届けたいと思う。

 

終わり。

ポニーに首ったけ

イリトルポニーという海外アニメがある。もともと1980年代にアメリカの玩具メーカーが作っていたポニーの玩具で,それが後にアニメ化されたものだ。歴史ある作品の宿命で何度もデザインがリニューアルされており,現在放映されているものはG4(第4世代)と呼ばれている。そしていまさらながら,これに手ひどくはまってしまっている。

dic.pixiv.net

 

 

ちなみに日本ではかつてブシロードが国内展開を行っていたため,吹替版の声優は超豪華である。メインキャラは沢城みゆきさん,三森すずこさん,佐々木未来さん,徳井青空さん,加藤英美里さん,橘田いずみさん。声優に詳しくない私でもほとんど分かるレベル。ただ,どうやら展開には失敗したらしく,Season2までしかブシロードは関わっていないようだ。そのため,ちょっと前からDlifeで始まったSeason3では声優が一新された。しかし毎週1回しか放送されずじれったいので,私はアメリカからDVDを輸入して見ている。

dlife.disney.co.jp

 

さて,このブログでたびたび書いているように今年7月の海外旅行で英語力不足を実感した私は,Netflixに入っているこのアニメを英語の勉強として字幕で見てみることにした。それがどれだけ恐ろしい沼であるかなど,そのときは考えもしていなかった。

 

もともと海外アニメは日本のアニメに比べるとどうしても絵の繊細さとか緻密さがなくて彩度が高く大雑把だという印象が強く,ディズニーとかピクサー作品を除けばほとんど見たことがなかった。カートゥーンっぽい絵柄も可愛いのだが,それまで日本のアニメに慣れていたため違和感があった。

 

もちろん『マイリトルポニー』も京アニの作品みたいに髪の毛一本一本がすごく緻密に丁寧に描き込まれているとか,新海誠監督の作品みたいに背景が驚くほど美しいとか,そういうことはない。しかし,とにかくポニーが可愛い。この時点で海外アニメに対する評価は「人間キャラはさておきポニーは可愛い」になった。このアニメにはたくさんのポニーが登場するのだが,どのポニーも可愛すぎて本国のキャラ紹介本(当然全編英語)をすぐさま買ってしまった。

My Little Pony: The Ultimate Guide: All the Fun, Facts and Magic of My Little Pony

My Little Pony: The Ultimate Guide: All the Fun, Facts and Magic of My Little Pony

 

 

このアニメはもともと小さい子向けなので,割と「友だちを疑っちゃダメ!」とか「見栄をはらない!」とか教訓っぽいことをよく言う。そして毎回,最後に学んだことをさらっとプリンセスに報告するのが,すごくハム太郎のロコちゃんっぽくて笑ってしまう。そして学んだことがあまり活かされておらず同じ失敗を繰り返したりするのもまた可愛らしい。

 

そしてこのなんとも可愛らしいポニーたちが歌ったり踊ったりするのも大きな魅力だ。この曲がどれも素晴らしい。そして割とミュージカルみたいにいきなり歌パートが始まったりするのも好き。公式があげている動画をいくつか紹介してみる。

www.youtube.com

国中のポニーの憧れ,Galaのパーティに臨む一行が喜びを隠しきれずに周りを巻き込んでいきなり始まるミュージカル。しかし実際にパーティにたどり着くと,現実はなかなかビターである。

 

www.youtube.com

このアニメで一番好きなキャラクター,ピンキーパイの歌。サムネイルの中央にいるピンク色のパーマのポニーだ。いつも明るく元気で,第四の壁を平気で破ってきたり物理法則を無視してきたりとトリックスターであり,すごく“漫画らしい”キャラだ。

 

www.youtube.com

 

 珍しくシリアスな回で,ロイヤルウェディングを乗っ取ろうとするヴィランと主人公組の対立を描いている。ヴィランが高らかに野望を語るパートがとても好き。

 

www.youtube.com

一個上の動画に関連して,主人公が王女と結婚する兄への思いを綴った歌。主人公のお兄ちゃんっ子が際立つ。タイトルの「B.B.B.F.F」とは「Big Brother Best Friend Forever」の略である。可愛い。

 

あとこのアニメ,カップリングの熱量がすごい。キャラクタが多い分,海外の掲示板に行くと色んな隠語が飛び交うカップリングの二次創作を見ることができ,それも楽しみの一つだ。個人的には最近はRarijackがアツい。

 

「ケモノキャラとかあんまり興味ないな」というそこのあなた。確かに私もそう思っていた時期があったが,今ではどのポニーもとにかく愛らしい。だからこそそういう人にこそ『マイリトルポニー』本編を見てもらいたいが,実は彼女たちポニーを擬人化したスピンオフ作品もある。『エクエストリアガールズ』だ。

dic.pixiv.net

 

こっちは劇場版で,話の展開的にはヴィランが出てきてみんなで力を合わせて戦うといった王道の物語になる。なんか途中から魔法の力で変身したりするのでプリ◯ュアかな?と思わないこともないが,こちらもすごく面白い。

 

そういえば先日,去年パリに行ったときの写真を探していたらエッフェル塔ノートルダム寺院に混じってなぜか『マイリトルポニー』を撮ったものがあった。なんで?と思ったが,パリで朝テレビをつけたら知らないアニメがやっていてなんとなく写真を撮ったことを思い出し,この出会いは宿命だったのだなぁという思いを強くもった。

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本題に戻るけれども,もともと小さい子向けのアニメということもあり英語も大変聞き取りやすい。英語の教材としてもぴったりだと思う。Season1~2まではNetflixやAmazonPrime,Season3はDlifeで見ることができる。『エクエストリアガールズ』もNetflixで見られる。ぜひ見てみて沼にどっぷりとはまってほしい。

 

終わり。

 

電子の夢でさようなら

日,電子辞書を取りに実家に帰った。英会話スクールで言葉に詰まったときにとっさに調べられるツールがあったほうがいいなと思ったからだ。

 

いまではWeblio辞書やらGoogle翻訳やらがとても便利になって電子辞書を使うことはとんと少なくなった。会社で英語論文を読む機会もあるが,グーグル翻訳に投げてしまうことも多い。最近では私の周りでは電子辞書の影もすっかり薄くなってしまった。しかし長い間,電子辞書と私は因縁浅からぬ関係だった。せっかくなので,この機会に振り返ってみたいと思う。

 

小学生の頃,教室の後ろに広辞苑が置いてあって,当時の私はそれをパラパラめくってそこに載っている難しい言葉や難読漢字を調べるのにハマっていた。そして同級生と広辞苑で見つけた難読漢字を「蒲公英ってなんて読むかわかる?」「灰神楽ってどういう意味か知ってる?」とクイズを出しあっていた。「回回教」と書いて「ふいふいきょう(イスラム教の意)」と読むことを知った当時の私はすげー!とテンションが上がっていたのをいまでも鮮明に覚えている。

 

親がはじめて電子辞書を買ってくれたのは小学5年生のときだった。周りに電子辞書を持っている子どもはあまりいなかったのでとても嬉しかったし,おかげで私の検索範囲はぐーんと広がった。いまの電子辞書はカラーで100冊とか200冊とかの本を収載しているのが普通だが,当時私が持っていた電子辞書のコンテンツは白黒だし広辞苑・英和辞典・和英辞典・英英辞典くらいだったと思う。その頃は英語に触れる機会はほとんどなかったので,専ら広辞苑の言葉を調べるのに使っていた。そのうち,適当に「あ」とか「い」とか入力して出てくる知らない言葉を覚える遊びをするようになった。また,一つの言葉からリンクして知らない言葉に出会えたりするととても嬉しかった。

 

当時は「ググる」という言葉を知らなかった(検索エンジンは専ら「ヤフーキッズ」だった)こともあり,紙の辞書から電子辞書への進化はとても大きなものだった。

 

中学生になると,英語の授業が始まったこともあり,多くの生徒が電子辞書を使うようになった。私も電子辞書を買い替え,ブリタニカ百科事典や類語辞典など多くのコンテンツを備えたカラーの電子辞書にグレードアップした。小学生の頃と同じように,「ウィドマンシュテッテン模様」「ハインリッヒの法則」「不易流行」などなど,知らなかった言葉をどんどん「お気に入り」に登録してウキウキしていた。そして同級生にそれを見せて「面白い!」なんて言い合っていた。この頃の私は知的好奇心の塊だったし,この頃に調べた言葉の束がいまの私の語彙力の基礎となっている。

 

高校生くらいの頃には,いま考えても必要性がわからないがワンセグ機能のついた電子辞書が出た。私は授業中にワンセグ視聴するのカッコいいじゃん,といかにも高校生らしいしょーもない理由でそれに買い替えた。またSDカードもついていて,私はアレな画像を保存して授業中に見てたらカッコいいじゃん,とこれまたいかにも高校生らしいしょーもない理由でワクワクしていた。結局アレな画像が見られたかどうかは忘れてしまったが,「本能に従順忠実」だったということだ。こうやって書いてみると高校生になってなんだかいきなり知的好奇心レベルが下がったような気もするが,実際は大学受験勉強で最も電子辞書を酷使していた時期だ。勉強の息抜きに「お気に入り」に入れた難しい言葉を見たりしていた。決してアレな言葉ではない。

 

大学生になり,英語の講義に加えて第二外国語の講義が始まった。私はフランス語を選択したので,新調した電子辞書に追加コンテンツとしてフランス語辞書を購入して使用していた。たぶん手書きパッドやタッチパネルが搭載されたのもその頃だったと思う。あとはクラシック曲がなぜかいっぱい収載されていたので,作業用BGMとしてイヤフォンで聴いたりしていた。

 

そして社会人になると電子辞書を使うことはめっきり少なくなった。いま使っているのは大学に入学したときに買ったものなので,かれこれ8年の付き合いになるが,後半の4年くらい,私が社会人になってからはたぶん一回も開いていなかった。ひさしぶりの再会だ。

 

実家から持ってきた電子辞書を開く。明るいライトがつき,ディスプレイが表示される。改めてメニューを見てみると広辞苑や英和辞典などのほかに,「家族みんなのバランスごはん」とか「冠婚葬祭マナー辞典」とか「漢方薬の手引き」とか一回も見たことがないコンテンツが収載されていることに気がつく。なんでも載ってんだね。

 

まだまだ知らないことがいっぱいある。まだまだ知りたいことがいっぱいある。そしてそれは現在進行形で増え続けている。私も幼い頃と比べれば色々なことが変わったり色々なものを失くしたと思うけれども,それでも「知的好奇心」だけは死ぬまでなくさないでいたいと改めて思った。

 

 

灰色の羽

の前に灰色の羽が散らばっていた。すぐ隣の電信柱の足元では,それが風に吹かれて吹き溜まっていた。

なんだろう,と思いふと目を上げると道の真ん中でハトが死んでいた。車にはねられてしまったのだろうか,仰向けになって死んでいた。

私はどうすればいいのかわからなかったが,なぜか涙が出そうになったので手を合わせて立ち去った。周りの人も気づいたようだが,すぐに目を背け,足を止める人は誰もいなかった。

帰りに通ってみるともうハトは跡形もなくなっていた。どうやら動物の死体を見たら役所に連絡するのが正しいらしいので,誰かが連絡したのだろう。しかし灰色の羽だけはまだ歩道に散らばっていた。

たったそれだけの出来事だが,ひどく刺さった棘のように胸が痛んだ。

 

数日前,新宿の料亭に置いてある水槽でフグがひっくり返って死んでいた。その水槽は道路に面していたので,歩道からその死んだフグは丸見えになっていた。10匹くらいのスイスイ泳ぐフグに混じって,1匹だけが完全に静止し死んでいた。もちろん足を止める人は誰もいなかった。私もどうすればいいのかわからず,立ち去った。

 

し意識して考えてみれば,いまこの記事を書いているあいだにもたくさんの生命が失われてるという当たり前の事実に思い至る。2015年の日経記事によれば,1秒間に4.5人が生まれ1.8人が亡くなっているのだそうだ。

www.nikkei.com

 

そういえば,日本神話ではイザナギノミコトとイザナミノミコトが言い争ったところから生と死のやり取りは始まったとされている。イザナミノミコトは黄泉の国で「生者を一日1,000人を縊り殺してやる」と言い,イザナギノミコトは「ならば私は一日1,500の産屋を建てる」と応じた。そこから,人は一日500人ずつ増えることになったとされている。

 

実際はそれを遥か上回るペースで人は増えているのだが,そのような話はスケールが大きすぎて現実味がない。私たちは目の前の死をそんな簡単に処理することは出来ない。人の生き死には統計ではない。たとえそれが動物だろうとなんであろうと,一つの死を前にして私たちはどうすればいいのかわからず戸惑う。

 

い先日,韓国で日本人女性が暴行を受けるという事件があった。その際,周りにいた人はみな見て見ぬ振りを決め込んだという衝撃的な報道がなされていた。

news.livedoor.com

 

これを見て,数年前の中国で「善人法」なる規定を盛り込む動きがあったことを思い出した。中国では目の前で人が轢かれていても助けないで見て見ぬ振りをするということが多くあるようだ。それはトラブルに巻き込まれるのを防ぐためだとのことだが,「善人法」では助けた人が不利益を負わないようにするのだそうだ。法律で決めなければ人助けをしない(できない)というのも寂しいものだが,日本も多かれ少なかれそういう部分はあるだろう。

www.asahi.com

 

様々な情報が駆け巡る忙しい現代社会のなかで,人はいろいろな感性を鈍麻させていく。そのなかで死に対する感性もまた鈍っていくのだろう。それは想像力と置き換えてもいい。たとえば飛び込み自殺による人身事故で電車が遅延したとき,イライラしてしまうのは仕方ない。しかし「ふざけんなよ。迷惑かけないで死ねよ」とか「知らねーよ。勝手に死ねよ」などという発言を見かけると,とても悲しくなる。飛び込んだ人がどういう人生を送ってきたのか,もちろん知る由はないのだが,「迷惑かけないで死ねよ」「勝手に死ねよ」の一言で切り捨てられてしまう人生などあるわけがない。さらに視点を広げれば,今この瞬間にだって世界中でたくさんの人達が殺されている。私の卑小な想像力では世界までは到底想像が及ばないが,それらを悼む心というのは常に持っておきたい。

 

そんなの知らねーよ,そんなの他人事だ,などと割り切ってしまうのは簡単だ。生と死は究極の他人事なのだから。しかし私は死に対して「見て見ぬ振り」をするのではなく常に敏感でありたいと思うのだ。

 

終わり。

 

 

イベリア半島・レコンキスタの旅(マドリード~リスボン編)

日,バルセロナに行った記事を書いた。

trush-key.hatenablog.com

 

前回の記事が思いの外長くなってしまったので,分割しここからはスペイン・マドリードポルトガルリスボンに行った記事を書いていく。さて前回の記事にも書いたとおり,バルセロナのSants駅からマドリードのAtocha駅まで乗っていく予定だった高速鉄道Renfeがストライキでキャンセルになってしまった。どうしたもんか。

 

ストライキでキャンセルに

とりあえず,キャンセルに怒れる乗客たちが集まっているカウンターがあったのでそこに向かう。前にいた若い女性がブチ切れているのを尻目に,駅員にどうすればいいんだと聞くと1時間半後の列車に乗れ,と指示され代わりの切符を渡される。駅員は謝罪もなく適当ではあるが,日本でお客様がキレていて駅員が平謝りしている姿を見ていると,日本も海外のようにあるべきだと思う。

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手配された別便の切符。

一等車両だったので,車内ではサンドイッチなどの軽食が出る。また,Cavaというスパークリングワインも出る。なかなかにリッチな気分である。

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スペインのスパークリングワイン・Cava。

 ◯マドリードに到着

さてさて,何はともあれマドリードに到着。ここはスペインの首都である。

 

スペインといえば闘牛!というイメージは強いと思うけれども,実はバルセロナでは闘牛は法律で禁止されている。スペインの闘牛では本当に牛を殺してしまうため,動物愛護団体からの猛抗議を受け2011年に法律で禁止されたのだそうだ。なので,バルセロナでは闘牛を見ることはできなかった。

www.afpbb.com

マドリードではまだ闘牛は行われているのだが,オンシーズン(5・6月)以外は毎週日曜日しかやっていない。意外と闘牛を見るチャンスは少ないのだ。

 

マドリード滞在が闘牛開催日とかぶらなかったので,とりあえず闘牛場だけ見に行ってみる。マドリードで最もよく知られるラス・ベンタス闘牛場だ。どこかコロッセオに似た雰囲気を感じる。

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ラス・ベンタス闘牛場。

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どうやら闘牛がない日はなかを見学できるらしい。入ってみると,なにやら若者たちがずっと走っている。将来の闘牛士なのだろうか,もしくはどこかの部活の練習なのだろうか。

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下に降りることもできる。

続いて,世界三大美術館にも数えられるプラド美術館へ。ここは内部は撮影禁止なので写真がほとんどないが,ゴヤ(「我が子を食らうサトゥルヌス」をはじめとする黒い絵シリーズもあった)やベラスケス,エル・グレコの絵画などを見ることができた。

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プラド美術館の外観。

さて,予約の時間が迫っていたので,スペイン王室がかつて暮らした宮殿である王宮に向かう。内部は基本的には撮影禁止だが,ロビーにある大階段と最初の部屋だけは撮影可となっている。50以上の部屋を見学することができ,そのなかにストラディバリウスが飾られている部屋もあり,「ああ,あの……」と感動した。私にとっては『ブラックジャック』と正月の格付けチェックでしか知らない代物だけれども。

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王宮の外観。

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大階段。

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天井の絵画。

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王宮を後にし,マドリードプエルタ・デル・ソル(太陽の門)という素敵な名前のエリアへ。ここは人も多くとてもにぎやか。ここには可愛らしいコケモモの木とクマの像が立っており,マドリード市の紋章にもなっているのだそう。

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コケモモの木とクマの像。かわいい。

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マンホールにも。

また,正直日本だと学園祭とディズニーランドのイメージが強いチュロスはスペインのおやつらしく,これを濃厚なチョコレートにディップして食べるのが伝統なのだとか。

 

さて,チュロスの超人気店・サンヒネスに来てみた。100年以上の歴史あるカフェで,店内には有名人の写真がいっぱい。サクサクのチュロスと,これでもかってくらいに濃厚で甘く溶けたチョコレートが異常にマッチする。これは美味い。

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入口。歴史がありそうな感じがする。

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こんな感じでディップして食べる。

 ◯サイフをスられる

ここで重大事件が発生。一緒に来ていた親がサイフをスられてしまった。というか落としたのか?よくわからないが,とにかくサイフがロストしてしまった。大ピンチ!なんとか現地の人にマドリード警察署まで連れて行ってもらい,あーだこーだと説明して調書を作ってもらう。なかなか疲れたが,貴重な体験だった。あと,助けてもらった現地の人(Alshyさん)が良い人すぎた。Uberで車を呼んで警察署までついてきてくれて,帰りはホテルまで送り届けてくれた(いい思い出で帰ってほしいから!と車代も全部出してくれた)。Alshyさん,本当にありがとう!この恩は一生忘れない。

  

リスボンに到着

て,ポルトガル編。マドリードからリスボンまで飛行機で1時間くらい。ポルトガルでは干したコッド(タラ)を使った料理・バカリャウが有名で,色んなところで食べた。

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バターの風味が強くとても美味しいバカリャウ。

リスボンサグラダ・ファミリアみたいな目立つ観光地はないが,美しい街並みそこを駆け抜けるトラムが本当に可愛らしく,絵になっている。また,とにかく坂が多いため,移動の足として5系統あるトラムやバスをフル活用することになる。トラムには丸っこい旧式と長細い新式があるが,だんぜん旧式のほうが可愛らしい。

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パステルカラーの可愛らしい建物。

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彩り豊かな建物群。

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旧式車両のトラム。

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新式車両のトラム。

また,リスボンではリスボアカードというものを購入した。これはトラムやバス,メトロなどの公共交通機関が乗り放題になるうえに観光名所がタダになったり割引になる大変優れたカードだ。

 

まずは多くの人が行き交うコメルシオ広場にある勝利の門に上り,眺めを楽しむ。丘の上にあるアルファマ地区も望める。リスボンテージョ川が大西洋に流れ込む河口にある都市なので,目の前には大きなテージョ川が広がっている。

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勝利の門の上から眺めるコメルシオ広場

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アルファマ地区を望む。後述のカテドラルがよく見える。

ポルトガルには大航海時代修道院や城が残っており,それを見て回る。おもにテージョ川沿いのベレン地区には,世界遺産ジェロニモ修道院や要塞であるベレンの塔大航海時代を称える発見のモニュメントなどが点在しており見ごたえがある。

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世界遺産ジェロニモ修道院

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内装。広い中庭がある。

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修道院横にあるサンタマリア教会。

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世界遺産ベレンの塔

発見のモニュメントにはエンリケ航海王子ヴァスコ・ダ・ガマフランシスコ・ザビエル,ヴァストロメウ・ディアスなど大航海時代にまつわる人物が彫られていた。

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発見のモニュメント。

モニュメントの上に登ることもできる。かなり眺めもよく,ベレン地区が一望できる。

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モニュメントから眺める修道院

また,トラム内で居合わせたおばあさんが「ホントアレは美味いよ!」と教えてくれたエッグタルトの有名店・パステイス・デ・ベレンに行ってみる。知らなかったが,エッグタルトはポルトガル名物なのである。そしてこのお店はエッグタルト発祥の地なのだそうだ。

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パステイス・デ・ベレン

すごく並んでいたのでテイクアウトして外で食べてみると,まだ温かい。皮はサクサクでなかのクリームは濃厚で,確かにこれは今まで食べたエッグタルトとは一味も二味も違う。別の料理なんじゃないかってレベルで美味しかった。

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テイクアウトしたエッグタルト。


トラムのなかでもトラム28という系統の路線は観光地を網羅しており,乗っているだけで楽しい。これはいつも混んでいるので,始発駅から乗らないと座れないし満員で乗れないこともしばしば。こいつに乗って丘の上にあるアルファマ地区をぐるっと回る。自動車に混ざって急な坂を大勢の乗客を乗せてガタピシ言わせながら登っていくトラム,なんて健気なんだ。

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トラム28。いつも混んでいる。

あとなぜだか,やたらトゥクトゥクを見かける。東南アジア限定だと思っていたら,いつの間にか生息範囲を広げていたのか。

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なぜかトゥクトゥクをよく見かける。

アルファマ地区で有名な風景といえば,カテドラルとトラムである。よく絵葉書などにも使われている。そして実際に見てみると,確かにこれは絵になる。ただここはバスやトゥクトゥクが多く,なかなか写真が撮りづらいのが難点。

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バラ窓も美しいカテドラル。

また,旅行中に無料で入れる教会はとてもありがたい存在だ。タダで座ってマップを見たり休んだりできるし,しかも結構涼しい。これが神の救いかと天井を仰ぐと,美しいバラ窓が目に飛び込んでくる。教会,本当にありがとう。

 

この辺は丘なのでどこも眺めが良い。737系統のバスでサン・ジョルジェ城まで上り,そこから徐々に降りていく。古城からの眺めは最高である。

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抜群の眺望。

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割とガッツリ古城の風格。

下っていく途中にあるサンタ・ルジア展望台ではポルトガルで有名な花,ブーゲンビリアが咲き誇る。展望台に飾られている,ポルトガルのタイルであるアズレージョの青も素敵だ。

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イメージ通りの南欧の風景。

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アズレージョ。深い青に吸い込まれそうになる。

展望台近くのお店でランチ。眺めが良いとごはんも美味しいものだ。バカリャウの美味しさもさることながら,イワシの炭火焼きはなんとも和風な料理で懐かしさを誘う。どうやらイワシはバカリャウと並び,ポルトガルではよく食べる国民食なのだそうだ。

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バカリャウ。オリーブオイルの風味が効いている。

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イワシの炭火焼き。

リスボンは高低差が大きいため,街中をケーブルカーが走っているのも面白い。最も有名なビカのケーブルカーに乗った。黄色く丸っこい車体でぱっと見,トラムに似ているがこちらはかなりの高低差を結んでいる。あとちょっと面長。なかなか発車しないなと思ったら運転手がすぐ横のカフェでずっとメシを食っており,みんなそれを待っているのもなんとも微笑ましい。日本だったらオッサンがキレているところだろう。

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一見,トラムとよく似たケーブルカー。

また,坂が多く高低差が大きい街並みということもあり,エレベーターが移動手段として利用されてきた。もっとも,現在ではほぼ観光のみであるが。サンタ・ジュスタのエレベーターは100年以上の歴史のあるエレベーターということもあり,観光名所となっている。

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サンタ・ジュスタのエレベーター。

なお,このエレベーターは2基稼働しているがどうしてなかなか効率が悪く,改札がエレベーター内にありそこでチケットの購入をする(前述のリスボアカードが利用可能)ため異常に進みが遅い。たいした行列ではなくても1時間くらい待つことになる。初日に並んだときはスタッフが「ちょっとした問題が起きた。まあちょっとしたもんだ。あと30分もあればみなさんにアナウンスができるはずだ」みたいなことを言い出したので「あっこれ動かないやつだな」と思い次の日に回した。案の定,その日はその後もずっと動かなかったようだ。

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エレベーター内は結構広く,20人くらい乗れる。

しかし,待った甲斐もあり,エレベーターで登った先には素晴らしい景色が広がっていた。思わず美しい街並みに言葉を失った。

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リスボンの街並み。

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ちなみにこのエレベーター,降りるとすぐ近くがレストランになっている。そしてそこからどうやって下に降りるのかが大変わかりにくい。一緒に上がってきたティーンエージャーの女の子数人と一緒にあっちでもないこっちでもないとウロウロし,やっと降りることができた。

 

降りた先でレストランを探し,気になっていたオリーブのパスタサーモンを食べる。リスボンでの最後の食事である。

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ポルトガルといえばオリーブ。

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サーモン。とにかく魚介料理が美味しい。

夏のヨーロッパの長い日も完全に落ち,明日は日本に向けて発つ日。名残惜しく,夜のコメルシオ広場をウロウロする。滞在日数は短かったが,海に面していて魚介料理が多く坂も多い,どこか日本にも似た(そもそも日本はポルトガルの影響を受けまくっている)この街がすっかり気に入ってしまった。絶対にまた来るぞ!と誓い,リスボンを後にしたのだった。

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勝利の門。

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トラムは結構遅くまで走ってる。

て,旅行記は以上で終わりであるが,記事の結びでひとつ触れておきたい。ポルトガルの街でやたらと見かけたものがある。それは電動キックボードである。

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日本ではあまり見かけない。

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発見のモニュメント付近に散乱していた電動キックボード。

色んな種類の電動キックボードがあるが,要は乗り捨て自由なシェアリングサービスなのだそうだ。スマホ端末のアプリで利用登録を行うらしく,最近日本でも目立つ自転車のシェアリングサービスと同様にも思える。ただ自転車よりもかさばらず気軽に利用できるのがメリットだろうか。

 

調べてみると,早ければ年内にも日本に電動キックボードシェアリングサービスの大手が参入するとリリースがあるようだ。ただ,以下の記事にもあるように安全性や景観を損ねかねない(現に上の写真にあるように,発見のモニュメントでは電動キックボードが散乱していた)という問題をはらんでいる。

www.watch.impress.co.jp

 

今後日本でもさらに議論がされてくるであろう問題だけに,それを先取りして見ることができたのは面白かった。

 

終わり。

 

イベリア半島・レコンキスタの旅(スペイン・バルセロナ編)

月,夏休みを利用してスペイン・ポルトガルに行ってきた。やや遅くなったが,旅行記をしたためてみる。思いの外分量が多くなってしまったので,こちらの記事ではスペイン・バルセロナ編のみにして,マドリードポルトガル編はまた後日で。

 

旅行の行程は,バルセロナ3泊⇒マドリード2泊⇒リスボン2泊。日本からバルセロナへの直行便はないので,途中でクウェートのドーハ空港にてトランジット。ちなみにカタール航空を利用したのだが,機内映画がかなり充実しており『バンブルビー』『スパイダーバース』など比較的新し目の映画もかなり入っていて驚いた。

 

ドーハの悲劇」でしか名前を知らなかったドーハ空港,やたらと広い。

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ドーハ空港はトランジットの際のハブ空港としてよく利用されておりとても広い。謎のオブジェが鎮座している。


さてトランジットを済ませ,スペインはバルセロナ空港に到着。しかしここで地獄の入国審査が始まる。これはつらかった。

 

なにが地獄かって,それは入国審査を待つ長蛇の列だ。待てど暮らせど遅々として進まない。よく見ると受付は10ゲート以上あるものの稼働しているのは3ゲートほど。そりゃ進まないわけだ。長旅で疲れてるし,あまりエアコンが効いておらず暑い。うーん,羽田空港の出国審査は機械がパスポートを読み取るかたちになってて数分で済んだのになあ。そうこうしているうちにまた別便が到着して待機列がどんどん長くなっていく。なんとも海外っぽい感じ。

 

待つこと2時間,ようやく自分の番。一歩前に進むと審査官は隣の同僚らしき人と談笑している。そしてやおらこちらを一瞥したかと思うとドン!と審査のスタンプを押す。かなり適当っぽかったけど,それでいいのか。

 

何はともあれ無事スペインに入国。暑い……!!しかし,湿度は低くカラッとしていてイメージ通りの地中海性気候だった。こりゃ日本よりよっぽど過ごしやすいぞ……。

kotobank.jp

 

さて,空港駅で72時間の乗り放題パスを購入し,ホテルのあるSant Pau駅に向かう。3日間ではなく72時間なので,使い始めの時間を覚えておかないといけない。また入るときにはこれを改札に通すが,出るときには改札はない。ヨーロッパ各国で改札の様子が違う(例えば,イタリアでは切符を“有効化”させないといけない)のは興味深い。

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これで72時間鉄道やバスなどが乗り放題になる。オトク。

ホテルのそばには世界遺産サン・パウ病院がある。一見すると病院とは思えないくらい豪奢な建築物。夜のライトアップも美しい。

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とても格好いい病院。敷地内もとにかくだだっ広い。

バルセロナで最も知名度が高いものといえば,ガウディによるサグラダ・ファミリアであろう。長年,未完成の象徴として語られてきたが,ガウディの没後100年・2026年に完成見込みなんだとか。でもここまで100年くらいかかってるのにあと7年で本当にできるのかなぁ。しかも動画で完成予想を見ると,かなり形が変わるようだ。

 


2026 We build tomorrow Construïm el demà Construimos el mañana

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ガウディ広場から眺めるサグラダ・ファミリア

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サグラダ・ファミリア中央のイトスギ部分から眺めた街並み。

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内装。森をイメージしているのだとか。

サグラダ・ファミリアを目の前にバルでごはんを食べる。イベリコ豚の生ハム,トーストにニンニクとトマトを塗ったパンコントマテ,揚げたじゃがいもにブラバソースをかけたブラバス。

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イベリコ豚の生ハムやパンコントマテ,ブラバス。

街中にはガウディの作品が溢れていて,やはり芸術の街だと感じさせられる。カサ・ミラカサ・バトリョを横目に街中を歩き回る。グエル公園はAlfons-X駅からバスが出ており,やや小高い丘にある。

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カサ・ミラ

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カサ・バトリョ

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グエル公園のトカゲのモニュメント。可愛らしい。

また,珍しい乗り物としてフニクラというものがある。これはケーブルカーなのだが,「フニクラ」という名前は日本ではフニクリ・フニクラという歌で知られているのではないだろうか。だいたいは替え歌だけれども。実はこれ,イタリアの鉄道会社が宣伝のために作った歌であり,世界最古のCMソングとも言われている。

 

www.youtube.com

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フニクラ。Paral-lel駅とMontjuic駅を結ぶ。

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さらにテレフェリック(ゴンドラ)に乗りMontjuic駅からモンジュイック城に向かう。

フニクラとテレフェリックを乗り継いでモンジュイック城に向かう。ここはバルセロナの市内が一望できるスポットだ。

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バルセロナ市街。

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港湾部。

また,バルセロナのLiceu駅のすぐそばにはボケリア市場という有名な市場がある。フレッシュなフルーツジュースや生ハムを食べながらブラブラ歩く。

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市場の入口。とにかく賑わっていた。

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フレッシュベリージュース,2つで1ユーロと格安だったしとても美味しかった。

また,バルセロナの海岸方面にも足を伸ばした。ビーチでは多くの人が泳いだり日焼けを楽しんでいた。港から遊覧船・ゴロンドリナス号に乗ったり,地中海を渡るテレフェリック(ゴンドラ)に乗って眺めを楽しんだりして海を満喫した。

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広々とした地中海を一望。

 

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シーフードレストランでパエリアなどを注文。日本のパエリアは結構カリカリしている印象だが,本家のパエリアは煮たような感じだ。シーフードの旨味がよく染み込んでいて美味だった。

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ホタルイカイカ墨パエリア。

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タコのガルシア風ポルポ。


また,立派なゴシック様式カテドラルは圧巻であった。天にそびえる尖塔の格好良さに驚く。聖歌隊席の精巧な作りには思わずため息をついた。

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正式にはサンタ・エウラリア大聖堂と言うらしい。

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聖歌隊席は息を飲むほど美しい。

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夜にはフラメンコショーを見に行く。せっかくなので世界遺産であるカタルーニャ音楽堂で行われるショーのS席をあらかじめ予約しておいた。

 

外見も内装も本当に美しく,とても贅沢な時間を過ごすことができた。間近の席で見るフラメンコも情熱的で迫力がすさまじく,一生忘れられない経験になった。

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外見。

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内装。

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天井はなんとも言えない美しさ。

また,スペインと言えば忘れられないのはピンチョス。バルをはしごしながらピンチョスをつまむ。頼み方がよくわからないのでとりあえず指差し注文。全体的にしょっぱ目なので,お酒に異常に合う。

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ピンチョスが並んでいる。全部食べたい!

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ピンチョス。これをつまみながらサングリアをあおったりしていた。

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スペイン風オムレツ,イベリコ豚の生ハム。

ころで街を歩いていると黄色いリボンのマークをよく見かける。ピンクリボンやレッドリボンは見たことがあるが,黄色いリボンは見たことがなかった。これはなんだろう?と思って調べてみると,カタルーニャ独立運動のシンボルマークなのだそうだ。

 

確かにスペイン自体はPIGS”(ポルトガル,イタリア,ギリシャ,スペイン)と呼ばれる財政状況が厳しい国に数えられている。一方で,バルセロナを含むカタルーニャ州はそのなかでも経済的に豊かであり,独立運動が常に燃え盛っている。2017年にはカタルーニャは独立宣言を行ったが,ただちにスペイン政府は無効を宣言し,いまなお対立は続いている。現在に至るまでの混乱が,カタルーニャ自治統領館に掲げられた政治犯と国外追放者を解放しろ”という言葉からも伝わってくる。

www.bbc.com

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カタルーニャ自治統領館に掲げられたメッセージ。

 

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公衆電話の落書き。

て,バルセロナ最終日。Sants駅からマドリードまで高速鉄道Renfeに乗って移動する。……しかし!なんと乗る予定だった電車がストライキでキャンセルになってしまったのだった。えーっ,なんだそれ。

 

事の顛末は次の記事で!ではでは。

trush-key.hatenablog.com